ハーメルン
モモンガ様ひとり旅《完結》
ひとりぼっちのオーバーロード


 ニグンとの戦闘では、前衛のいない状態で切らせるわけにいかない手札だったので沈黙させたが、アインズは内心使用させればよかったな、と思っている。
 アインズが魔法で調べた際、中に封じ込められていたのは第七位階魔法だと判明したのだ。この輝きならば第十位階魔法まで封じられるというのに、中に込められていたのは第七位階。ニグンがこれをもってかなり傲慢に振る舞っていたから、てっきり中に込められた魔法は第十位階だと思ったのだ。
 最高位天使が封印されている。アインズと天使は相性が悪い。全力でも下手をすれば勝てない。そう思って先手を打ったというのに、第七位階程度ではアインズなら余裕だったではないか。
 水晶が破壊された事で中で封じられた魔法が発動し、周囲を光が染め上げる。
 そこに、光り輝く翼の集合体が降臨した。

 その天使の名を――威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)

「〈暗黒孔(ブラックホール)〉」

 そして、アインズはそれをただ一言の魔法で消滅させた。清浄なる輝きが消滅し、再び周囲に夜の静寂が訪れる。

「……ふぅ」

 アインズはどさりと寝転がる。夜空を見上げながら、これからの予定を考える。

 ――とりあえず、しばらくはこの村に滞在して捕まえて森の奥に隠したあのスレイン法国の連中を拷問し、情報を吐かせる。最低限の情報さえ手に入れられれば、後はお払い箱だ。始末しよう。
 その後はどうするか――考えて、すぐに結論が出た。

 今、自分は身一つでこの世界にいる。この見知らぬ世界に。

 脳裏に、『ユグドラシル』時代の事を思い描く。まだ、自分が駆け出しのプレイヤーの頃、ゲームの宣伝文句に誘われて、未知を求めて冒険したあの心躍らせた気持ちを。

「うん、そうだ」

 自分を縛るものは何も無い。アンデッドの肉体ならば飲食は不要で、呼吸さえいらない。

 未知を探しに行こう。あの頃の、昔の自分の心を思い描いて。見知らぬ世界を自由気ままに冒険するのだ。きっと、それはとても素敵な事に違いない。
 ガゼフという眩しい人間に出会って、人間の――鈴木悟としての自分の気持ちを思い出した。

「未知を探しに行こう。あのスレイン法国の連中を見るかぎり、きっと他にもプレイヤーはいる。もしかしたら、また皆に会えるかも」

 かつてのギルドメンバーに会えなくても、アインズ・ウール・ゴウンという名前を名乗れば、知っている人間が声をかけてくれるかも知れない。彼らと情報交換するのもいい。
 この、未知の世界を冒険しよう。きっと、それはとても素敵な事だから。

 アインズは夜空を見上げ続ける。この美しい星空の続く先を。自分の知らない世界を思い描いて。
 朝陽が昇るまで、アインズはずっと夜空を見上げ続けた。

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