後日談
「やるべきことは……ゴウンをまず探すことだな。それも極秘裏に」
「極秘っすか?」
今までジルクニフの警備として横に控えていた男……バジウッドが不思議そうに訊ねる。皇帝に対するような口調では無いが、しかしこの室内にいる誰も文句を言わない。
ジルクニフはバジウッドの言葉に頷いた。
「そうだ。極秘裏に行うのは必須だぞ」
「大々的に探した方がすぐ見つかると思いますけど……?」
「理由をどうする気だ? “フールーダより格上の魔法詠唱者を是非帝国に迎え入れたいので、アインズ・ウール・ゴウンを探してます”とでも言うのか? 法国と王国が血眼になって探し始めるぞ。当然、見つけても帝国に報告は無しだ。次の王国戦にゴウンが出てきたらどうしてくれる?」
「ああ、なるほど。そりゃ無理っすね」
フールーダと帝国全軍は互角だ。当然、フールーダより強い魔法詠唱者は帝国全軍より上、という事になる。周辺国家最強のスレイン法国に隠し玉を増やされても困るし、かと言ってリ・エスティーゼ王国につかれると、国力を手間暇かけて削っていたのに一気に引っくり返されてしまう。
「だからこそ、極秘裏に捜索する必要がある。王国がゴウンを軽視している内にな。連中の頭の悪さに感謝のキスを贈ってやりたいよ」
ジルクニフの言葉に、室内の全員が苦笑を浮かべる。彼らの中では、王国の貴族連中の頭の悪さは周知の事実なのだ。もっとも、少し前まで帝国は王国を笑える立場では無かったのだが、国のトップの出来が王国とは違った。数代かけて皇帝が徐々に準備を整え……ジルクニフの代で全てに始末をつけた。そして王国は逆に、代を重ねる毎に腐敗を強めてしまったのだ。
今の王国の国王――ランポッサ三世はどうにかしようと躍起のようだが、ジルクニフは知っている。あのおぞましい腐敗が、一代でどうにかなるはずが無い。帝国のように数代かけなければ出せない“膿”だ。そして当然……そんな隙は与えない。
「しかし、探せますかね?」
バジウッドの疑問は当然だ。何せ、相手はフールーダの魔法でさえ感知されない凄腕の魔法詠唱者である。しかもたった一人の人物を極秘裏に探そうと思うと、どうしても人員が足りないように思えた。
しかし、ジルクニフは気軽そうに答える。
「大丈夫だろ。聞いた話だと巨大な魔獣を連れているそうじゃないか。いくら何でも、それは目立つだろうしな」
「あー……確かに」
どこにいた魔獣かは聞きそびれたが、あの死の騎士に対して一歩も引かなかったという魔獣だ。ただの魔獣であるはずが無い。そんなものを連れて歩けば目立つにもほどがある。
だからこそ、ジルクニフの心配はそこではなかった。
「問題はスレイン法国だな。あっちに捕捉されると厄介だぞ。法国の特殊部隊を壊滅させたことは、当然向こうだって気づいているだろうしな」
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