思想/対立
「ゴウン殿も元気そうですな」
ガゼフは朗らかに笑うと、兵士達にお礼を言った。
「知らせてくれてすまないな」
「いえ。お気になさらないでください戦士長様」
「そうはいかん。何せ、この御仁は俺の命の恩人なのだ。王都を訪れた際には、ぜひ館で歓迎したいと思っていたのだよ」
ガゼフはそう言い、アインズを促す。
「では、私の館まで案内させていただきたいゴウン殿」
「それはかまいませんが……ストロノーフ殿、貴方は仕事があるのでは? それに、宿泊施設を探しますよ? そこまで貴方の家に厄介になるわけには……」
「いや、心配していただかなくて大丈夫だ。もう仕事の時間は済んでいるので。それに、あの時言ったはずでしょう。ぜひ、私の館で歓迎したい、と」
既に日が暮れ始めている時間帯だ。空は夕焼けで染まっている。嘘は無いのだろう。アインズは頷いた。
「分かりました。ただ、私は今連れの魔獣がいるのですが、大丈夫ですか?」
「魔獣? なんと、魔獣を使役しているのかゴウン殿! その話もぜひ聞きたい。勿論かまいませんとも! ……っと、失礼。そういえば私も今居候がいまして、その者に対して少しばかり助言をしてもらってもかまいませんか?」
「どうしたのですか?」
ガゼフに促され外に出て、ハムスケを呼びガゼフの横に並ぶ。ハムスケを見たガゼフは驚いたようだが、しかし他の兵士ほど驚愕はしなかった。ただ、「立派な魔獣ですな」と褒め称えるのみだ。ハムスケはどや顔を見せつけている。それを無視して、居候に助言を送ってほしいというガゼフの話が気になった。
「実は……少しばかり、挫折をしてしまったようで。自分より圧倒的に強い者と会って、心が折れてしまったようなのです。同じ強さの俺が助言をしても、おそらく無駄でしょうし――それで、出来ればゴウン殿にも彼の話を聞いて欲しいと思いまして」
「なるほど……」
ガゼフと同程度、という事はつまり周辺国家でも強いという事だ。そんな人間が挫折するような強者――アインズはツアーを思い出して気を引き締める。やはり、強者というのは意外なところにひっそりといるものだ。ツアーほど強い者は早々いないだろうが、それでもレベル五〇はある相手かもしれない。むしろ、アインズの方からそれがどういう相手か聞いておきたかった。
「分かりました。私が役に立てるか分かりませんが、話を聞くくらいなら出来るでしょう」
「感謝する、ゴウン殿」
そう言って、ガゼフは申し訳なさそうに笑った。
……その後、アインズはガゼフに促されながら王都の街中を歩き、ガゼフと今まであった事を話す。特にガゼフが興味を引いたのはやはりハムスケの事で、ハムスケがトブの大森林に縄張りを張る森の賢王と呼ばれる魔獣だと知ると、とても驚いていた。ただ、エ・ランテルの住人ほど詳しいわけではなく、ちょっとした英雄譚で聞きかじった事がある程度らしい。だからこそ、とても詳しく話を聞きたがっていた。
ぶっちゃけ、アインズは簡単にハムスケを使役してしまったので、あんまり語れる要素が無いので、『漆黒の剣』が言っていたエ・ランテルで有名だった話をガゼフ相手にしただけだが。
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