ハーメルン
モモンガ様ひとり旅《完結》
王国の闇 後編

 

「――では、これからの事を話し合いましょう」

 ニニャとその姉を寝室に残し、アインズとペテル、ルクルット、ダインは居間に集まってこれからの事を話し合う。そう……姉の体を治療したからと言って、それで全てが解決するわけではない。いや、むしろ問題はここからだった。

「現在、貴方達はこの王都に巣食う犯罪組織『八本指』に狙われている、ということでいいですか?」

 アインズが訊ねると、ペテルが頷いた。

「ええ。ニニャのお姉さんは昔貴族に妻として誘拐同然に連れ去られたらしいのですが、ニニャの聞いた噂ではあまりいい貴族では無かったらしいです。おそらく、そこから『八本指』の息のかかった娼館に売られたのでしょう」

「一応、今じゃこの国の王女様のおかげで国に奴隷売買は禁止されてんだがなぁ……抜け道ってやつは必ずあるもんだし。借金の形として娼館で働かせるのは違法じゃねえ」

 ルクルットが顔を嫌悪に歪めて語る。ダインも頷いた。

「我々は冒険者――それも(ゴールド)級だからこそ、ニニャは捨てられていた姉君を連れ帰ることが出来たのである。しかし、やはりどこかでその姿を見られていたのであろうな。ルクルットが尾行に気づいたのである」

「そして――今も、監視されているわけですか」

「……たぶん、そうです。本当はこの王都をもう出たいのですが、おそらく検問所で止められると思います。口惜しいですが、『八本指』は噂では貴族達と深い繋がりがあるそうで、たぶん彼女が勤めていた娼館も貴族達が客として通っていたはずでしょう。そうなると、証拠である彼女も知ってしまった我々も逃がすわけにはいかないと思われます」

「…………権力者達を完全に抑えられているのが痛いですね。王都は彼らの庭、そして検問所は絶対に通過出来ない。……何か、目くらましでもしないと皆さんがエ・ランテルに帰るのは不可能でしょう」

 アインズは頭を抱えたくなる。彼らはどうしようもないほど詰んでいる。アインズがいなければ、彼らは二度とこの王都から出られなかっただろう。

 ……アインズの魔法を使えば、彼らを簡単に王都から逃がす事が出来る。〈転移門(ゲート)〉を使えばいい。それだけで、彼らはこの王都から脱出出来る。しかし、それをするわけにはいかない。
 まず、アインズ自身がそこまで彼らの世話をするわけにはいかないし、〈転移門(ゲート)〉は反則過ぎて後々大問題に発展する危険性がある。彼らを信用しないわけではないが、それでも〈転移門(ゲート)〉を見せる事には抵抗があった。
 続いて――ニニャの姉を娼館から退職させなければ、そのまま彼らは誘拐犯の汚名を被せられる可能性が大きい。そうなると、彼らは冒険者ではなくワーカーとなるしか道が無くなる。

 帝国でアインズは『フォーサイト』と『ヘビーマッシャー』というワーカーチームに出会ったが、彼らの話を聞くかぎりワーカーというのはかなり危険性の高い仕事だ。冒険者組合が多少の安全を確保して、冒険者のレベルに見合った依頼を紹介するのと違いワーカーは自分達の判断で依頼人と直接交渉し、依頼を受けるか否か決めなければならない。

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