ハーメルン
モモンガ様ひとり旅《完結》
黄金の夜明け/未だ明けず

 

「よくやりましたね、クライム」

「勿体ないお言葉です、ラナー様」

 クライムは『漆黒の剣』を『六腕』から助けた後、城へと戻りその時の出来事を主人であるラナーへと報告していた。
 ラナーはクライムからの報告を聞いて、そしてクライムを労わる。クライムはラナーに労われ、感動で涙がこぼれそうになった。ラナーは、いつだって優しい慈愛の王女だ。

「ですがクライム、無茶はしてはいけませんよ。今回は素晴らしい人たちのお力添えがあったからこそ、そのような結果が出せたのです。貴方があまりに無茶をすると、私は心配します」

「……はい」

 少しだけ悲しそうな顔をしたラナーに、クライムは申し訳なさそうに頭を下げる。クライムとて分かっている。このような無茶が出来たのは、ガゼフとブレイン、ラキュース、そしてアインズがいたからだ。いや、アインズがいなければもしかすると、クライムも全くの無傷では済まなかっただろう。最初のサキュロントの一撃で、殺されていたかもしれない。

(強くならなくては。ラナー様をお守りするために……)

 ラナーの未来だけは、何としてでも守る。クライムは決意を胸に秘めた。

「さて……クライム。では明日になったら、そのゴウン様に手紙を届けていただきたいのです」

「手紙、ですか?」

「ええ。これから手紙を書いておくから、明日の朝届けてください。戦士長様のところに行けば、そのまま彼に届くと思います」

「かしこまりました」

 クライムは頭を下げて了承する。では、明日の朝ラナーから手紙を受け取ったら、一番にそちらに行こう。確かガゼフの館にはブレインが滞在している。彼に頼めばそのままアインズに手紙が届くだろう。

「ゴウン様には感謝しないといけませんからね」

 優しく微笑むラナーに、クライムは手紙の中身が何なのか悟る。おそらく、それは感謝の手紙なのだろう。

(ラナー様は本当に、お優しい方だ……)

 自らがラナーに拾われた時の事を思い出し、クライムの胸はラナーに対する崇拝でいっぱいになる。今回の件は今のところ、表沙汰にするわけにはいかないのでアインズを城に呼んで感謝の言葉と報酬を渡すわけにはいかない。そのために、ラナーは誰にも気づかれないようガゼフの館にクライムをやり、ブレインから経由してアインズに手紙を届ける気なのだ。
 極秘なのだから、あちらが勝手にやった事なのだから、と無視してもいいだろうに。

「ラナー様。ゴウン様には私が必ずラナー様の慈悲深い御心を御届けします」

「よろしくね、クライム」

 クライムの言葉に、ラナーはいつも通りに優しく微笑んだ。



「さて――――」

 クライムが部屋を去った後、ラナーは寝室に置いてある机に向かい、手紙の準備をする。

 クライムの性格上――そしてクライムから聞いたブレインの性格上、どんな手紙だろうと勝手に手紙を開けて中を見る事はない。
 つまり、単なる普通の手紙で問題無い。アインズも、クライムが直接届けに来たと言えばこれが自分……王女からの手紙だと、偽物だと疑ったりはしないだろう。

「まずは感謝の言葉から書かないと」

 ラナーはサラサラと簡潔に書く。そして――

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