16 ホテルアグスタの後
Side Teana
ある日のこと、私達はホテルアグスタの警護任務を請け負う事となった。
相変らず、最大火力である隊長陣をドレスアップさせて内部警護に回すという意味不明な戦力配置に頭を悩めつつ、とりあえず自分達で出来る事をと、広域探査魔法で戦場になるだろう地域の地形情報を把握して。
案の定襲撃してきたガジェットドローンの群を、ロングアーチから貰ったデータと組み合わせ、作成したマップデータ上に投影。かなりリアルな戦況情報を得ると共に、副隊長陣営のフォワードをサポートする形で守備陣形を整える。
そうして全てのガジェットをなんとか殲滅し、何事も無く機動六課隊舎へ戻った後のことだ。
「……地球への出張任務は? いや、それ以前になんでミスショットが……」
小声で何かをボソボソと呟きながら、此方を奇妙な目線で見てくる御剣二等陸士。ジロジロと此方を不審な目で見てくるその様は、正直見られていて気持ちのいいものではない。
「おやティアナ。今日も相変らず美しい。が、折角のその美しさを憂鬱な顔が妨げているよ。いや、その少し憂いた顔すら可愛らしいのだけれども」
「……はぁ。そうだ、いま少しお時間もらえますか?」
「おや、ティアナからデートのお誘いとは。少しとは言わず明日のモーニングを共にするまで……」
「はいはい。とりあえずロビーに行きましょうか。この時間ならもう人も居ないでしょうし」
言いつつ鳳凰院さんをひっぱり、六課隊舎のロビーへと連れて行く。
六課のロビーは既にひと気が無く、明りも既に消灯していた。
「で、相談とは?」
と、最初にその話を切り出したのは鳳凰院さんから。なんだかんだでこの人、面倒見のいいところも在るのだ。
「はい、今日のことなんですけど」
「……あぁ、ホテル アグスタの警備の仕事、だよな? 特に問題は無かったと思うんだが?」
「ええ、そうなんですが……」
言いつつ、今日の出来事のあらすじと、その後の御剣二等陸士の不審な視線についてを相談してみた。
「……御剣が?」
「はい。なんだか変なものでも見るような眼で見られて……」
「――――――」
「あの、鳳凰院さん?」
「……朱雀でいいって言ってるのに、ティアナは硬いなぁ」
と、何か少し目元を指でつまんで揉み解す鳳凰院さん。如何したのかと声を掛けると、いつもの気楽そうな声でそんな事を言って。
「これが私ですから」
「……ま、わかった。それは俺がアイツに話を聞いてみよう。ただ……」
「ただ?」
「一つ聞かせて欲しい。ティアナの、そのデバイスをくれたっていう師匠の事を」
「マスターの事を?」
なんでメラさんのことをと、思わず内心で首をかしげながらも、その言葉に首を縦に振る。
「聞きたいのは一つ。ティアナの師匠って、どんな人だ?」
「変な人です」
思わずその問いに即答していた。目の前にはポカンとした鳳凰院さんの顔。この人がわざとではなく、自然な顔でこんな間抜けな顔をするのは珍しい。
「変な人?」
「はい。鳳凰院さんみたいに、変な行動を取る人、ではなくて、……そうですね、奇天烈な行動の果てに明後日の方向から成果を引っ張ってくる人、って感じでしょうか」
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