03 セカンドフォール
身を覆う羽毛も無く、くちばしも無く、その代わりに牙を持つトリ。
肉食獣のそれに身を狙われる高町なのはは、必死に魔力攻撃を当ててトリを牽制する。
最初に当てたのはディバインシューター。
誘導性のその攻撃は、トリの姿勢を乱すことには成功した物の、その効果はそれだけ。まるですれ違い様に肩がぶつかっただけとでも言うように、トリは問答無用で高町なのはに襲い掛かった。
次に仕掛けたのはバインド。砲撃魔導師たる高町なのはの、縁の下を支える慣れ親しんだ術だ。
然しコレも効果は低い。何せ相手は全長15メートルの巨体だ。それは戦闘機を手錠で押しとどめようと言うような無謀な行為でしかない。
そうして最後に高町なのはが選んだのが、自らが長年愛用し続けた術――つまりは、砲撃。
シューターで姿勢を乱し、出来た一瞬の隙を狙って砲撃を叩き込む。
ディバインバスターと呼ばれるその一撃。迫る桜色の壁に、コレならばトリの無力化も出来たのではないか。
そう、高町なのはが考えた、次の瞬間。
「キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
甲高い、まるで悲鳴のようなその音。咄嗟に耳を守った高町だったが、次の瞬間凄まじい衝撃に押され、高町なのははそのまま地面へと叩き落された。
(いったい、何が……)
何が起こったのか確認しようとして、高町は全身に走る激痛に思わず顔をしかめ、その原因を見て改めて顔色を悪くする。
左肩から、胴体を横断するように走る裂傷。まるで鋭利な刃物にバッサリ切られたかのようなその傷。
不可思議な現象にパニックを起こしつつも、けれどもその思考を放棄。即座に次の手を考えて頭が廻りだす。
その正面。どうやったのか、此方の砲撃を耐え抜いたギーオスが、こちらに向かって勢い良く走り出した。
その眼は完全に此方を獲物として捉えている。
(――拙い)
咄嗟にディバインバスターの発射準備を整えるものの、コレを撃ってしまえば後が続かない。
けれども、コレを打たなければ私は確実にあの怪物に「食われ」てしまう。
背筋を這う冷たいもの。その感覚を無理矢理押し殺して、その瞬間を待つ。
『Master……』
「未だだよ、レイジングハート」
『――Master』
「まだ…」
『――――Master!!』
「行くよ、ディバイン!!」
『――Buster!!』
彼女にとって慣れ親しみ、何時もなら頼りがいの在る桜色の光の柱。けれども、あの怪物に相対してのこの魔法のなんと心許ない事か。
身体には傷、魔力は枯渇寸前。
絶望に押しつぶされそうな心を鼓舞して、少女は砲撃に更に魔力をこめようとして――。
そうして、淡い光の柱を押しつぶす、白い太陽が落ちてきたのだ。
「えっ……?」
思わず声を漏らす高町なのはの視線の先。落ちてきた太陽は、トリの傍で大爆発を起こした。
その衝撃は凄まじく、傍に居た高町なのはは地面を派手に転がりまわる羽目に成った。
そうして、痛む傷を抑えながら立ち上がった高町なのはが眼にしたのは、片腕をもがれ、地面の上でのた打ち回るあのトリの姿だった。
一体何が起こったのか。それを確認しようと高町なのはが周囲を見回すと、その視線が一点で固定される。
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