08 可能性
――轟音と共に空を裂く白い稲妻。
それは宙を舞う三羽の怪鳥と、それに相対する黒い騎士に向けて光の矢の如く空を走る。
そうして駆け抜けた光の矢。黒い騎士の脇を通り抜けたそれは、三羽の怪鳥、その中心を飛行していた一匹を巻き込み、空中で盛大な爆発を起して見せた。
「――っ!!」
爆風によりあおられる二羽と一人。だが然し、相対する二組には決定的に違う差異が存在する。
そもそも魔法に近い純粋数学による空間制御を用いたメラと、餌食とした魔力を推力として利用しているギーオスでは、空中での被弾時の影響はギーオスのが大きいのは明白。
瞬時に体勢を立て直したメラは右手にマナを集中。白く輝き一回り大きくなったかのように見えるその手を携え、瞬時にギーオスの一匹に肉薄する。
「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「ピギャアアアアアアアアアアア!!!!」
滞空で姿勢を整えようとしていたギーオス。その無防備な腹部に向けて放たれた白い一撃。バニシングフィストを受けたギーオスは、甲高い悲鳴を上げた。
途端にギーオスの身体から零れだす白い光。内側からあふれ出す白い炎に焼かれ、二匹目のギーオスが宙に砕け散る。
が、その一撃の最中、最後の足掻きといわんばかりに砕け行くギーオスから放たれた閃光がメラの左腕を刎ね飛ばした。
「――っ!!」
咄嗟に軽くなった左肩を押さえつけるメラ。そんなメラの視線の先、数的有利を失ったと判断してか、最後の一匹であるギーオスがメラに背を向けた。
小さくうめき、けれども表情に一切の苦悶を浮かべることも無く。刎ね飛ばされた腕をキャッチしたメラは、ソレを小脇に抱え、そのまま魔法陣を展開。
再びメラの背後にセットされる多数のプラズマ火球。それもソレまでのものと違い、一つ一つのサイズがソレまでの物を圧倒的に上回っていた。
城砦から放たれる石弓の如く、次々と宙へ放たれる白い火球。それらを右へ左へ上下へとフラフラと揺れて回避してみせるギーオス。けれども次の瞬間、ギーオスの下部後方から放たれた光の火線に、咄嗟にといった様子でギーオスが真上へと回避した。
その瞬間。メラの航法に比べ、比較的航空力学に近い法則で飛行していたギーオスだ。咄嗟の上昇で一瞬その速力が落ちた。
「おおおおおおおおおお!!!!!」
放たれるプラズマ火球。サイズは通常通りの、けれども圧倒的速力を持ったソレ。宙を引き裂き飛び出したプラズマ火球は、狙いを違える事無く、一直線にギーオスの頭部へ命中。
莫大な熱エネルギーを叩き込まれたギーオスは、内側からはじけるようにしてその姿を掻き消した。
「……」
そうして、漸く全てのギーオスを駆逐したことを駆逐したメラ。表情こそ変わらないものの、何処か疲れたような雰囲気を漂わせた彼は、そのまま真下、海上を浮遊している母艦ウル、その甲板へと向かうのだった。
Side Mera
疲れた。マジデ疲れた。こんな重労働をしたのは何年ぶりだろうか。
いや正確には精神的疲労。俺、今でこそ生物兵器だけど、元々はしがない学生さんですよ? 命を掛けた戦いとか、プロの軍人に任せたい。
「メラ、無事かっ!?」
と、甲板に到着した途端、ハッチから現れたのは高町恭也。慌てた様子で此方に近寄ると、何故か驚いたような顔で此方を見つめて。うん?
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