ハーメルン
ナザリックへと消えた英雄のお話
公都:出会い

「失礼しまーす。あ、同室の方ですか? 宜しくお願いしま……す……」

 相部屋に踏み入ってきたその少女を、リウル・ブラムは一目で気に入らないと判断した。

 道を歩くだけで人目を惹くだろう可愛らしい少女だ。容姿の整い方はそこらの貴族の娘よりも上だが、日向ぼっこしながら和んでいる飼い猫の如きのんびりほんわりした雰囲気がとても親しみやすそうで、近寄りがたい感じが一切しない。
 少女は何故かリウルの顔に頬を赤くして見惚れているが、もしも花の咲くような笑顔を浮かべていたら、魅了される人物が老若男女を問わず幾らでも湧くだろう。

 この宿に泊まるという事は、この少女も冒険者なのだろう。プレートを下げていない所を見ると、登録手続きをしたばかりの新入りか。

 年の頃十三か十四歳程だろうか、リウルが冒険者になった時と丁度同じくらいの年齢だった。自分は既に仲間がいたから冒険者になれたが、この少女が冒険者になる事を組合は良くも許したものだと驚嘆してしまう。

 本人の気質を表したかのような柔らかい金色の眼をした少女は、艶めいた白金の髪を三つ編みにしていた。穏やかでのほほんとした顔に似合っていて、いかにも可愛がられて育った箱入り娘と云った感じだ。それでいて甘ったれた雰囲気が無いのは好印象だが、思わず自分と対比してイラッとしてくる。

 リウルは黒髪を短く適当に切り詰めている上に、生来の眼付きの悪さと顔立ちの鋭さの所為で、新人だった頃から男に間違われる事が多かった。十七歳になり、名も売れた今ではその勘違いも少なくなったが、無くなりはしない。身長は伸びたが胸は余り育たず、斥候や盗賊として鍛えているせいで、細身なりに筋肉もしっかり付いている。
 間違っても可愛いとか可憐等と表現されるような容姿では無いのだ。

 ──俺とは天と地の差じゃねぇか、同じ冒険者をやっている癖に。

 少女は肌も綺麗だった。病弱に見えるほど白過ぎるでもなく、かといって日に焼けて黒くなってもいない健康的な肌だ。シミやそばかすが一切見当たらず、黒子すらも美観を損なわない様に職人が計算して配置を決めたかのような絶妙なバランスだった。

 けったくそ悪りぃ、とリウルは心中で毒づく。

 胸は無い。大きいとはお世辞にも言えないリウルと比較してもまだ小さい胸は、起伏が全く視認できないほどだ。リウルを貧乳とすればこの少女は無乳。ちょっと溜飲が下がった。

 四大神のそれとは違う、質素な木彫りの聖印らしきものを下げていた。少女はリウルも見知らぬ神の神官らしい。いくら魔法詠唱者だからと云っても、こんな細くて小さな体で戦闘がこなせるか。転んで額に痣でも作ればいいのに。

 細いと言えばウエストだ。爬虫類か何かの鱗と皮で作ったベストを着ているから、少女のくっきりとくびれた胴がとても目立つ。その細いウエストは痩せ型なリウルをしてほぼ同格といった風情だ。胸の差分だけ対比では自分が勝っている、とリウルは相対的勝利を誇る。

 対して足は完敗だ。少女の足は細いのに肉付きが良く魅力的であった。矛盾しているだと? ならば此処に来てこの少女の足を見ろ、それが矛盾を超えた回答だ。実際問題、この足の奇跡的なバランスは生来のポテンシャルによるものだろう。極度に良質な筋肉と程良い脂肪が整った骨格に乗っているのだ。だから見た目には柔らかく適度なボリュームで、それでいてひ弱な感じはしない。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/7

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析