ハーメルン
ナザリックへと消えた英雄のお話
公都:面接申し込み

 公都の冒険者組合で働いている名物受付嬢、パールス・プリスウは、今日も今日とて頑張ってお仕事に勤しんでいた。本人的には至極真面目に一生懸命なのだが、今まで積み上げた輝かしい実績の数々の所為か、一挙手一投足にはらはらされがちである。

「ちょっとあんた、今その書類に同じハンコを二回押さなかった?」
「えっ。……大丈夫ですよ、ちゃんと正しい箇所に一回ですよ?」
「そう? ならいいんだけど……」

 信用されていない訳では無い。無いと思う。仕事は普通に任せられているし、処理能力に劣る訳でも無い。なのに如何にもチェックがキツイというか、信頼が条件付き染みている気がした。その条件とは、一人っきりで繊細さや正確さが要求される仕事をさせない、と云う物だ。

 冒険者の方たちなどはもっと酷い。依頼票の誤字精査や正誤を他の受付嬢に見てもらう位はパールスの目の前で平然とやってのける人がいる。

 曰く『君はちょっと抜けてる。しかも自覚が薄い』だとか。

 そう言う人に限ってパールスの事をまるで小さな子供の如く扱うのである。パーちゃんやスウちゃん等と気の抜ける仇名で呼ばわるほどだ。
 パールスはこう見えて十九であり、大人の女性である。子供の時分から冒険者組合で細々とした下働きをこなし、成人を期に受付嬢を任されている。身長は成人する少し前から伸びていないが、身体と中身はしっかり成長している。足りないのは身長だけだ。他の部分は全て大人の女に相応しいボリュームを備えている。

 自分が子供扱いされがちなのは全て身長の低さ故に違いないと、パールスが少々ズレた事を考えていた時である。冒険者組合の玄関が開かれ、一人の小さな人影が入ってきた。
 白金の三つ編みが歩みに合わせて尻尾の様に揺れている。金の瞳が気持ちキッっとしていて、なんだか子供なりに決意の表情である。パールスはその可憐な少女の如き容姿の人物に見覚えがあった。昨日冒険者組合を訪ねて来た少年である。

「あ、イヨちゃんだ」
「あんたね、友達じゃないんだから……」
「先輩、あの子あれで男の子なんですって。信じられます?」
「はぁ? あのね、人には色々と事情ってモノがあるのよ。本人がそう言ってるんだったら建前上でもそう扱うの。組合が冒険者と認めた以上はね」

 先輩受付嬢はなにか理由があってそんなあからさまな嘘をついているのだと思っているらしい。ならばそれを酌んで、そう扱うべきだと。
 本当に男だという現実は、どうやら可能性としてすら頭に浮かんでいない様だ。

 ──んー? でも本人は本当に男だって言ってるんだよね。書状にもそう書いてあったし……でも見た目は完全に女の子だよね。どっちなんだろ?
 
 パールスはちょっと悩んで、性別を区別せず『可愛い子供』として判断する事に脳内で決定した。イヨが十六歳だという事実は、彼女の頭からすっぽり抜け落ちている。

「あれあれあれ?」

 てっきりプレートを受け取りに真っ直ぐパールスの所に来るかと思えば、イヨは途中から鉄プレートの男性冒険者に引っ張られ、掲示板の方へ方向を転換した。依頼が貼ってある掲示板では無く、その横にある比較的小さな掲示板の方である。各チームがメンバー募集の広告を張ったり、組合の告知などが張り出されたりする連絡掲示板だ。

 よくよく見れば、イヨの周りには十人近い冒険者が付いて歩いている。偶然一緒のタイミングで来たのかと思えば、何やらイヨの付き添いの様な雰囲気だ。銅から銀位までの冒険者チームのリーダーたちであり、パールスも知っている顔ばかりだった。

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