公都:面接申し込み
俄かな期待で三人の目が輝く。実績の方が本当ならば大したものだ。後衛でも前衛でも合格点と云える。複数の冒険者チームの推薦などもかなり期待できる。パールスが告げた名前は銅から銀のチームとその代表の名だが、殆どは経験と実績のある者達ばかりだ。現在は銅や銀でも、これからの修練によって更に上に進めるだろう可能性が有る面子である。
三人でアイコンタクトを取り、会ってもよさそうだと合意する。代表としてリウルが口を開き、
「いいぜ、会おう。案内してくれ」
「は、はい。了解しました~」
そうしてパールスに先導されて案内される【スパエラ】の面々。その顔には隠し切れない期待が見え隠れしている。
本当に傑物であったら良いのだが、冒険者に求められるのは強さだけではない。
強さと同じ位に、仲間として信頼できる人格も求められるのだ。糞野郎としか思えないような輩はいくら強くても御免である。信頼も信用も出来ないし、チームワークを損なう。
その点、前の仲間であるミッツとメリルは良い奴だったのだ。ミッツは竹を割ったような性格ながらも少し強情だったが、思いやりのある憎めない男だった。メリルは少し遠慮しいな所もあったが、やる時はやる意志の強さも併せ持っていた。
これから会う奴が、あいつらと同じ位の良い仲間になれる奴だったらいい。そう期待しながらも、こんな少しの時間で新たな仲間が見つかるなど都合が良すぎるとも思っている。
だが今回は多くの冒険者からの推薦を得た人物という事で、期待が勝っている。昨日登録をしたばかりの新参が、仮にもオリハルコン級冒険者チームへの推薦を得ているのだ。少なくとも性格や人格の部分は大丈夫だろう。
無論猫を被っている可能性もあるが、冒険者たちの眼はそこまで節穴では無い。可能性として排除し切るまでは行かずとも、ごく低確率と思って良かろう。
「そやつはどんな面構えをしておった?」
「えっと、とても可愛らしかったですよ。何だか飼い慣らされた猫みたいな感じで」
「へえ、女性か? 歳は?」
「そうとしか思えないんですけど、男の子らしいんですよねぇ。十六だって言ってました」
「……んん?」
親爺二人は何やら若いな、子供じゃないか等と話しているが、リウルの脳裏に引っかかるものがあった。
可愛らしく、飼い慣らされた猫の様な雰囲気。
女性にしか見えない外見で、十六歳の男。
そんな奴と昨日知り合ったような。もっと言うと、変な意味では無く一夜を共にしたような。
「……そいつさ、すっげえ純粋かつ単純そうな見た目で、詐欺師に騙されそうな感じじゃなかったか? 年の割に幼い容姿で能天気っぽい」
「あ、良く分かりましたね、その通りですよ!」
そんな話をしている内に、目的地に到着していた。パールスがやり取りを交わしてドアを開けると──其処にいたのは複数人の男女、知った顔ばかりだ。推薦者たちだろう。そしてそんな連中の前にいる、一人の可憐な顔付きの少女、にしか見えない少年。
「あ、あの! 僕、イヨ・シノンと言います! 皆さんのチームに是非とも加入させていただきたく思いまして、参上いたしました!」
「──やっぱりお前か、イヨ」
向こう三年どころか、現役でいる限りは一生揶揄われ続けるかもしれない。緊張した様子のイヨを見て、リウルはそう思った。
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