ハーメルン
ナザリックへと消えた英雄のお話
習練、旅立ち、道行

後世の書籍「各国各時代、最も人心を照らした英傑たち」末節より抜粋

~以上の様に、特に公国内において「小さな剛拳」イヨ・シノンと仲間たちの活躍、伝承は事欠かない。しかし、彼の足跡を追う者がどうしてもぶち当たる疑問が存在する。
 あれほどに多くの人を救い、高き勇名を馳せて活躍した彼が──何故忽然と姿を消してしまったのか、という疑問だ。

 自らの故郷に帰る事が出来たのだ、と結ぶ物語は多い。
 妖精神に導かれて妖精郷へと去ったのだ、と信じる者も多い。
 人知れず引退し、平和な余生を妻子と共に過ごしたと歌う吟遊詩人も数多いる。

 しかし、彼ほどの人物が人知れずして去るなどと云う事をするだろうか。
 第二の故郷として彼が常に心を寄せていたリーベ村には、今でもイヨ・シノンがいずれ約束を果たしに戻って来るという言い伝えが伝わっていると聞く。
 彼は第二の故郷に一度帰省したが、「帰る方法が見つかったら再び訪れる」という約束は守られていなく、故に彼は今一度戻って来ると。

 私は不思議に思うのだ。
 彼の伝承には意図的に無視されている、絶対に描かれないし歌われない結末がある。
 
 彼は確かに英雄だった。誰よりも優しく強い偉大な人物だった。それは間違いないが──何故誰も彼の死亡については語らないのだ? 
 英雄譚の最後に華々しく散る英雄と云う結末は決して珍しくは無い。これだけ彼の活躍が、事実と創作の双方が伝えられているのに──何故死亡という結末だけが一つも見当たらないのだ? 

 妄想と揶揄されるだろう非常識な話だが、私はこう思ってしまうのだ。

 ──誰か、恐ろしく広大な範囲に影響力を及ぼせる絶対者が、彼の本物の結末を覆い隠しているのではないか、と。 

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