ハーメルン
ぼくのかんがえた さいきょーの かんたい
突撃艦+α


――密着! 謎多き秘海、光子力鎮守府の実態に迫る!

そんな見出しが踊っていたのは、本日の朝刊。本営から発行される情報雑誌の一コーナーであった。
どうやら以前ふみこ少佐のとこの青葉さんから受けた適当な取材が、まかり間違って形になってしまったらしい。
驚きで吹いた茶で猫吊るしを濡らし、むせ返りつつ慌てて目を通す。

――我らが艦娘達の帰るべき家、鎮守府。数多く存在するそれらの中で、特に情報の少ない光子力鎮守府という秘境がある。ワレアオバは極秘ルートから未知の跋扈する彼の場所へ――。

云々かんぬん、連々至極。
怒った猫吊るしにポコスカやられながら読み進めてみたものの――まぁ、誠に残念ながら、大した事は書かれていなかった。

精々が新しい艦娘が生まれた、ホウメイさんのラーメンが美味しい、土産の光子力煎餅が美味かった――そんな雑事を仰々しく語っているだけで、半ば食べ歩きレポートの様相だ。
仕事の無い俺がサボってるだの窓際閑職だの、青葉さんに愚痴ってしまった給料下がるような話は一切書かれておらず一安心。猫吊るしをタオルで拭きつつほぅと息を吐いた。

「提督っ! おはようございます、今日は何を――って、どうしたんですか?」

そう元気よく部屋に入ってきた五月雨さんが俺達の様子を見て首を傾げた。どう説明すべきか考えたが、とりあえず雑誌を差し出し丸投げておく。俺の特技は遠投です。
当の五月雨さんは言われるがまま開かれたページに目を通し、何となく察してくれたようだ。ふむふむと頷きつつ、何故か慎重にこちらの様子を窺って。

「……えっと、提督ですら秘匿の心配をする程、この鎮守府には知られちゃまずい秘密がある……ので、しょうか」

違った。何か真面目な方向に勘違いされていらっしゃる。
というか「提督ですら」の部分に決して褒められない信頼感が見えた気がするのだが、俺は泣けば良いのだろうか。

……いやまぁ、彼女の言う事もあながち間違っていなかったりするけども。

「え……やっぱり曰くとか、あるんですか……?」

そんな俺の呟きを聞き取ったのか、五月雨さんの慎重の中に僅かばかりの好奇が灯る。怖いもの見たさというやつだろうか。

まぁ、とにかくあれだ。簡単にいえば、ここは沢山のよく分からん物の入れ物なのだ。
まだ深海棲艦というよく分からん奴らとの戦いが始まったばかりの頃。俺達人間はそれに対抗するため、大量のよく分からん物を生み出した。
オーバーズシステム?とかシロガネドライブ?とか、何か知らんが当時は優秀なオツムが多く、結構大層な物が開発されてたらしい。結局はその前に艦娘という存在が確立してしまい全ボツになった訳だが。

で、そうして生み出しかけたよく分からん物達は、当然日の目を見ること無く殆どが廃棄される運びだったのだが、それは勿体無いんじゃねーのと貧乏性の誰かが言った。
そうしてその気になったら研究再開してみよっか的な感じになり、現状出来上がっちゃってた物全てを一箇所に纏め、光子力とかいうこれまたよく分からんものでラップしたのである。いやー、フワッフワ。

「そ、それがここなんですか? といいますか、どうしてそんな場所に鎮守府を……」

何かいい感じの土地だったから、貧乏性ついでに鎮守府もおっ建てたらしい。まぁ俺以外の提督が着任してない所を見ると、無駄金使っちまった感が半端ないけど。

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