ハーメルン
阿礼狂いに生まれた少年のお話
すれ違った戦い

「で、なんであんたがここにいるのよ」

 里の外、黒幕がいると思われる霧の湖へ向かう道中、信綱親子は合流した博麗の巫女に苦虫を噛み潰したような顔をされて出迎えられた。
 彼女は八雲紫と一緒に立っており、招かれざる存在である彼らに困惑の視線を向ける。

「俺たちも動く」
「戻って里の防衛をしてなさい。襲ってこないとは限らないわ」
「上白沢慧音以下、火継の面々が行っている」
「……異変の解決は巫女の役目。お互いに役目があるってこと、わかってるでしょう」
「そうだ。阿弥様を守るという役目に従って、俺は阿弥様を害した者を討ちに行く」

 話は平行線をたどる。元より、信綱と巫女の言い分が噛み合うことなどあり得ないのだ。

「良いではありませんか、博麗の巫女」

 故に変化は第三者より与えられることになる。
 二人の言い分を傍観していた紫が、扇子に口元を隠してそのようなことを言う。

「ちょっと、紫?」
「いじらしいことではありませんか。仕える主が危ないから、その危険を排する。実に論理的な帰結ではなくて?」
「だけど今回の異変は本当に危なくて……!」
「そう、危ない」

 パチリ、と音を立てて扇子が閉じられ、巫女の方へ突き付けられる。

「――だからこそ、弾除けは多いに越したことはない。違う?」
「……っ! 里の人間をそんなことに使えるわけないでしょう!?」
「あら、そこのお二人はそれを理解しているようだけど?」

 話を振られたため、首肯して口を開く。

「俺も父上も承知の上だ。それに目的は一致している。足並みを揃えて動こうなどと言うつもりはないが、ある程度の協調は認めて欲しい」

 認められなくても勝手に動くが。
 そう考えていたのが読み取られたのか、紫はやれやれと首を振る。

「言っても聞きませんし、無視しても勝手についてきますわよ、この手の人種は。だったらある程度手綱を握ってしまった方が良いのではなくて?」
「……っ! 私の努力は何なのよ……!」

 納得できないように歯噛みする巫女を、信綱は真っ直ぐ見据える。

「お前の力を否定するつもりはない。だが、俺たちも力になりたいという思いは認めてくれないだろうか。……無力に震えるのは嫌なんだ」

 さも無力を嘆くように言う。そんな使命感に突き動かされたような立派なものではないが、言うだけならタダである。

「……わかったわよ。あんたたちも犠牲が出たのに動くな、じゃ不満が溜まるだろうしね」
「では、話もまとまった辺りで移動を始めましょうか」

 紫がポンと手を合わせてふわりと微笑む。
 その様子を巫女と信綱、双方が胡散臭そうに見て、同時にため息をつく。

「……味方にこいつがいるのが不安だが」
「それは同感。気が合うわね」
「二人ともひどい!?」

 心なしか涙目で見られるが、二人とも無視した。

「どう向かうつもりだ」
「お互い足並みは揃えなくて良いとのことですし、バラバラに進みましょうか。霧の湖の向こうに悪趣味な紅い館があります。そこが目的地ですわ」
「ふむ……」

 頭に地図を思い描く。霧の湖は年中霧が覆い、しかも妖精の住処でもあるため人々が好んで近寄る場所ではない。

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