捜索開始2
それから天子と一緒に露店や通行人に声をかけて捜索を行った。
だが、めぼしい情報は入手できなかった。
むしろ声をかけるたび、俺や天子に難癖をつけられる始末。
なるほど、種族間の争いってこういうことだったのか。
「ちょっといいかしら。探し物してるんだけど」
「…………」
「おい、流石にシカトはないだろあんた」
「……ふん。人間の小童に言われる筋合いはない。さっさとあっちへ行け!汚らわしい」
「な、なんだと!」
「天界の住人が堂々と下へ降りてきて、しかも人間を連れ歩いてるなんざ滑稽だな。おい、あんた!せいぜいこいつら下種に食われないようにしろよな」
「お前!」
俺が我慢の限界で足を踏み出しかけた瞬間、天子が腕を引っ張って制した。
「……いいわよ、言わせておきなさい。次、行くわよ」
「でも……」
「無駄ないざこざは起こさないでって言わなかったかしら」
「…………」
もうかれこれ二時間ほどこのような状態だ。
天子は慣れているのかどんなに酷い因縁や難癖をつけられても顔色一つ変えずに俺を
抑えることに徹している。
自画自賛ではないけれど、かなり俺は心が広い方だと思う。
でも、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。
「はぁ……ここまで収穫ないってのは厳しいな」
「仕方ないわよ。あんたの話じゃ探し物って大体拳の一回り大きいくらいの大きさなんでしょ?この広い土地でそんなのを探そうっていうのがそもそも無理難題に近いんだから」
それもそうだ。
戦極ドライバーとロックシード。
それほど大きくもないこの二つを探し出すのは砂漠に撒かれたガラスの破片を探すの
に等しい。
「でも、絶対に見つけないといけないんだ。俺はあのベルトを見つけた時から、責任を背負ってるんだ。今更その責任を投げ出すわけにはいかない」
そう、俺には責任がある。
力を、戦うための強さを手にしたその時からまるで逃れられぬ呪いのような責任を背
負っている。
「……そう。ま、あんたがどんなものを背負ってようがどんな過去があろうがあたしがやることは変わんない。その探し物っていうのが見つからない限りは元の世界にだって戻れないんでしょ?なら早急に見つけるもの見つけなきゃね」
「あぁ……、ありがとう。てんこ」
「ふ、ふん!別にあたしはあたしのすべきことをしようとしているだけよっ!」
「……でも、少し疲れた。ちょっと休憩しないか?」
「そうね、歩きっぱなしだったものね」
大通りの右端へ寄り、店舗の軒先にあるベンチへと二人とも腰を下ろす。
「うーん、やっぱり片っ端から聞くんだと時間がかかるばっかりで的確な情報は得られないかもしれないな……」
「それは言えてるわね。ましてや声をかけた途端にくだらない暴言を投げつけられるようじゃどうあがいても無理かも」
「あれ?もしかして今まで言われたこと結構気にしてたのか?」
顔色一つ変えないからてっきり何とも思っちゃいないと思っていたけど。
天子は溜息を軽く吐きながら言う。
「あたしは人間じゃないわ。だけど、聖人でも仏でもないの。そりゃあれだけ頭ごなしにあることないこと言われちゃ頭に来るわよ」
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