ハーメルン
やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。
あざとかわいい後輩と……。【中編②】
アイスを食べ終わって(結局俺はほとんど食べてない)から再び仕事を始めたが、一色はさっきの事もあって落ち着かないのか、全然集中出来ていない。もちろん俺も仕事に集中出来るほどのメンタルはなかった。さっきの一色の艶っぽい表情を思い出すだけで顔が熱くなる。
はぁ……俺が落とそうとしてるのに、逆に落とされそうになるとは思わなかったわ……。
「先輩どうしたんですか? さっきからわたしのことずっと見てますよね?」
「ばっ、べ、別にお前のことなんか見てないんだからね!」
俺の唐突なツンデレ発言(気持ち悪い)に一色は心底蔑んだ目で見てきた。そっちの趣味はないからパスでお願いします。
「今のは本当にドン引きなんですけど……。先輩にツンデレは似合いませんよ」
「そんなん自分でも分かってるわ。てかお前だって俺のこと見てきてんだろ……」
さっきから一色が俺のことを見てくる回数は、はっきり言って異常だった。それはもう俺もドン引きするレベル。三秒に一回は見てきた……と思う。自意識過剰じゃないよね? 勘違いじゃないと信じたい。
俺も一色のことが気になってチラチラ見てしまうから、ほとんど見つめ合っている状態だ。ぼっちは人と視線を合わせるのが苦手だからドキがムネムネしてしまう。まあ視線が合う前からずっとムネムネしてるんだけど。
「わたしは先輩のことなんか見てないですよ?」
どうやら自意識過剰だったようだ……とは言えないな。そこでしらばくれるか普通……。
ちょっとイラッとしたから、また意識してますよアピールでもしてみるか。
「はいはい、そうですか。俺は普段から割と一色のこと見てるんだけどなー。一色は俺のことを見てくれないのかー。残念だなー」
……超適当だな。自分でも信じられないくらいの棒読みになってしまった。さっきからムネムネしすぎてこんな甘ったるいこと言えるほど余裕がないわ……。これじゃいつも通りドン引きされるなぁ……。
「え、えっと、さっきのは冗談でそ、その、わたしも先輩のこといつも見てるというかなんというか……って何言わせるんですか、先輩のえっち……」
俺の予想に反して、一色は指をもじもじと絡めながら、下を見つめて、ぼそりと呟いた。いや、この子何言ってるの? いつも見てるって何? ちょっと嬉しいんですけど……。でも最後のえっちってなに? じとっとした目でえっちなんて言われたら、ちょっと興奮しちゃうからやめてね?
「いや、それは理不尽だろ……」
「先輩がいつも見てるって言うのが悪いんですよ!」
「俺はいつもとは言ってないんだけど……。いつもって言ったのはお前だけだから」
「うっ……も、もう! 先輩のバカ!」
……うん、さっきからちょっと理不尽すぎる。一色のが俺よりムネムネしてると思うから勝負はここから俺のターンだ。というかいい加減ムネムネから離れよう。
俺は隣に座っている一色の方に椅子ごと体を向けた。
「一色もこっちに椅子ごと体を向けてくれないか?」
一色はなんで? と少し眉をひそめたが、素直にこっちを向いた。ううむ、素直すぎて将来変な男に引っかかりそうで怖い。だから俺が一色を貰おう。
……うん、今のはなし。
気を取り直して、俺は一色の膝の上にちょこんと置いてある小さな右手を、両手で包み込むようにぎゅっと握った。
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