拝啓:母さん、友達沢山できてます
管理局本局の広い廊下では、私と王様が今だ戦い続けていた。や、戦いと言っても模擬戦してるとかそういうのではなく、今までの恨みだと言わんばかりに私をいじろうとしてくる王様を撃退……撃退しようとして、物理的に叩き潰されていた。
「いった……うぅ、暴力反対」
「黙れ、大騒ぎしおって……誤解を解くのがどれだけ大変か」
「本当は、嬉しいくせに……」
「デモンズゲイト!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
再び壁に叩きつけられる。く、くそう、下手に出ていれば、調子に乗って……私にも切り札があるんだと言う事を、思い知らせてやらねばなるまい。
「デモンズゲイト三発! 謝罪と賠償を要求する!」
「……すまぬ。頭の打ち所が悪かったようだな」
「そう言う謝罪じゃない!? ふふん。そうやって余裕ぶっていられるのも今の内だよ。私が切り札を切ったら……申し訳ありませんでした。昼食をご馳走しますので、それだけは……って謝る事になるんだからね!」
「ほぅ、面白い。やってみろ……先の様な手でくるのであれば、開口一番吹き飛ばすが……」
王様は余裕の表情で腕を組みながら私を見つめる。どんな手で来ても、物理で黙らせれば良いとか思ってるんだろうけど……そうはいかないよ。
「言っとくけど、この切り札は本気でヤバイよ。あまりのヤバさに私も躊躇うくらい」
「……それほどのもの? 一体何をするつもりだ」
本当にこの切り札はやばい。確実に効果は出るし、正しく一発逆転になりうるだろうけど……あまりの凄まじさに、私自身これ使っちゃうのは不味いかななんて思ってる。
私が告げた言葉を受けて、王様は怪訝そうな顔でどんな内容か尋ねてくる。
「……通信でフェイトに泣きつく」
「申し訳ありませんでした。昼食をご試走しますので、人間やめかけてる妹を召喚しないで下さい」
「早ッ!?」
先程までの余裕は何だったのかと言う程、王様は一瞬のうちに綺麗な角度で頭を下げてくる。凄まじいフェイト効果……ってか、人間やめかけてるって、うちの妹は周囲からどう思われてるんだろう? い、いや、確かに私も最近、フェイトが人外の領域に片足踏み込んできた様な気がしてるけどね。
「まぁ、昼ぐらいならよい。祝いも兼ねてな」
「ありがと~じゃあ、どこで食べよっか?」
「ここの食堂で良いだろう。流石管理局本局の食堂だけあって、一流店にも引けはとらんぞ」
「おぉ、美味しいって評判だよね」
管理局本局内でも一際大きな食堂は、安い、早い、美味いと三拍子揃っており、メニューの数たるや管理世界のご当地料理までよりどりみどり。料理人は高級店の料理長クラスがわんさかいるとかで、どの品も絶品と聞いている。世間的にもそれは有名で、食べたいと言う人は後を絶たないが、局員と許可を得た者しか食べられない。この食堂で食事をする為だけに、局員になるって人もいる位美味しいらしい。
「でも、私、今はまだ局員じゃないよ?」
「構わん。我の客として許可を取る。その程度の権力は持ち合わせている」
「おお! よ、流石一気に三尉まで駆けあがった出世頭!」
「や、やめんか、たわけが……」
王様は、なんか上級キャリアって言う凄い資格を先日習得して、上層部からも後の幹部として期待されている人物だ。今でこそただの捜査官だけど、昇進スピードは同世代の中でも群を抜いており、遠くない内に提督となって船を持つのではないかと噂されている。
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