ハーメルン
アリシアお姉ちゃん奮闘記
拝啓:母さん、フェイトが人間止めました

 少々息を切らせ、未だへっぽこな自分のスタミナを実感しつつ階段を上る。てか、転送装置みたいなの付けてくれればいいのに、変な所でローテクで困るね。

「……ごめん、遅くなった!」

「いや、まだ始ってはおらん。問題無い」

 訓練校から大急ぎで来た私に、王様が簡潔に間に合った事を伝えてくれる。

 ここは時空管理局本局内で最大級の広さと耐久力を誇り、大がかりな訓練での使用を目的とした第五訓練場の観戦室。私が今日この場に急いでやってきたのは、フェイトがここで行われる模擬戦に参加するからだった。
 今日行われるのはかなりの大規模模擬戦で、魔導師100人対100人、計200人の大人数で行われる。参加者は若手魔導師からランダムで選出されたらしい。

「どれどれ……おぉ、やっぱこれだけの人数が居るのは壮観だね。あ、はやても出るんだ」

「うむ、奴と守護騎士二人も参加しておる。貴様の妹とは別のチームだがな」

 参加者をざっと眺めてみると、はやて、シャマル、ヴィータの姿もあり、どうやらこの大規模模擬戦に参加するらしい。それ以外には、私達がよく知ってる人は少ないね。私個人で言えば、120人位は知り合いだけど……

「けど、凄い面子だね。殆どAランク……分隊長クラス以上の魔導師じゃん」

「ああ、この大規模模擬戦は管理局としても大きな試みらしい。観戦者も相当の数にのぼる。複数ある観戦室だけでは無く、モニタールームにも人が溢れかえっていた」

「ふへぇ……大一番だね」

 でもこれは実際良い経験になるんじゃないかと思う。特にフェイトは執務官志望だし、執務官になってからじゃこれだけの人数での模擬戦は中々経験する機会が無いだろうしね。
 いや、でも、実際凄い人……王様に頼んで私の席も確保しておいて貰って良かったよホント……

「あ、アリシアだ。やっほ~」

「お、レヴィも来てたんだ」

「うん。ここじゃないけどにゃのはとかシグにゃむも来てるみたいだよ~さっきシュテるんが通信してた」

 青のツインテールを揺らしながら現れたレヴィと軽く挨拶を交わす。ユーリも少し離れた場所に姿があるし、この観戦室には王様の家族が集まってるのかな?
 ちなみにレヴィの言うにゃのはとは、なのはの事で、シグにゃむはシグナムの事だ。レヴィはわざとやってるのか、単純に覚えられないのか……基本的に家族以外の名前は間違えて呼ぶ、フェイトの事もへいとって呼んでるし、私も……って、あれ?

「……そう言えば、レヴィって最近私の名前間違えないよね?」

「ひっ!?」

「……なんで、そんな怯えた顔を……」

「……貴様の妹によって刻まれたトラウマだ」

 レヴィは数か月前までは、私のこともありしゃとかそんな風に間違えてたはずだけど、思い返してみれば最近は普通にアリシアって呼んでくる。そう思って尋ねたんだけど……またフェイトが、何かやったのか!

「えっと、うちの妹が、また何か粗相を?」

「……一言だけ言うのであれば、我は今までの人生で、あれほど恐ろしい『壁ドン』を見た事が無い」

「……ボク、分かったんだ。この世には……間違えちゃいけないものがあるんだって……」

「……えと、代わりに謝っとく。ごめんね」

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