拝啓:母さん、王様はツンデレです
リンディさんに半ば無理やり紹介状を書いてもらって、あちこちの部隊で武者修行の様なものを続けて半年。最初はあちこちを渡り歩いてたんだけど、二ヶ月ほど前からある部隊に落ち着いて訓練に付き合ってもらってる。局員でも何でもない私がここまで好待遇なのは、一重にリンディさんのおかげ、流石は提督権力が違うよ権力が!
とまぁ、そんな訳で訓練中なんだけど……ビルが再現された訓練場で、私の目の前に黒い球体が現れる。
「うえっ!?」
それを見た瞬間即座に反転し、猛ダッシュで逃げる。直後に黒い球体は爆発的に膨れ上がり、周囲のビルを飲み込んでいく。くそっ、全然手加減してくれない。と、とにかく距離を……
「滅ぼせ! レギオン・オブ・ドゥームブリンガー!」
「ぎにゃあぁぁぁぁ!?」
空から黒い剣がミサイルの様に降り注ぎ、私の周囲に爆撃が始まる。地面を転がる様に逃げ回りながら、これを放った相手に視線を向ける。青い空を切り裂く様な漆黒の翼、灰色と黒のツートンカラーのセミショートヘア。腕を組む堂々たる姿は、正しく支配者と呼ぶに相応しい。
くっそ、広範囲魔法をバンバン撃ちやがって、ふざけた魔力量めっちゃ羨ましい。後、魔力弾撃つぐらいしか出来ないド素人の私に対して、この容赦ない弾幕……手加減って言葉は彼女の辞書には無いらしい。
必死に逃げる私に向かって、女性は大きな杖を構えてニヤリと笑みを浮かべる。
「我が暗黒、ここに極まれり……」
「おい、馬鹿やめろ……」
「平伏せよ! ジャガーノート!」
「ぬわあぁぁぁぁぁ!?」
視界を埋め尽くす極大殲滅砲撃。私は成す術もなく飲み込まれた。
「……王様さ、手加減って言葉知ってる?」
「無論、知っている。貴様に対してする気が無いだけだ」
「あっそ……」
私が王様と呼ぶのは、時空管理局本局所属の魔導師ディアーチェ・K・クローディア。なんでもはやてを元に生まれたマテリアルだとかなんとか、説明受けたけど難しい話だったのでもう忘れた。
まぁ口調こそ尊大で偉そうだけど、私の訓練に毎日付き合ってくれてるのでなんだかんだで面倒見が良い。後教えるのがすっごい上手いんだよね。私に分かる様に説明してくれるから、ホント色々ありがたい。私があちこちの部隊を渡り歩かなくなったのは、王様に出会えた部分が大きい。本人には絶対言わないけどそれなりに感謝している。
「よし、じゃあ、もう一戦!」
「……なに? まだやるのか? 先程ので12戦目だぞ……」
「え? 王様、疲れたの? 以外と根性ないね」
「……良かろう。さっさと構えろ。また叩き潰してくれる!」
うん。扱いやすい性格だ。こう言う所も好感触だよね。私は今、自分の戦い方……戦闘スタイルを探している。私には魔法の才能は無い。普通のやり方では、上級魔導師どころか中堅魔導師にだって敵わないと思う。ならば探さなければならない。その人には出来なくて、私にだけ出来る戦い方ってやつを……だから私は、まだ訓練用デバイスのままだし、基礎的な魔法以外は習得していない。なにか、掴めないかと模擬戦を繰り返す毎日だけど、当然こんな状態では勝ち星なんて拾えないけど、今はそれでいいと思う。とにかく今は強者との戦いを積み重ねるんだ。
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