ハーメルン
オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?
4話「犬!」
「うわぁぁぉあ!待ってください妖夢殿〜!」
薄明かりに照らされた洞窟の中で少女は叫ぶ。
「急いでください命!あっ後ろ来てますよ!」
「え?ひぃいいい?!」
ここはダンジョン。オラリオという迷宮都市の真下に存在するモンスターの巣窟だ。そんな所に2人の少女が元気よく走り回っていた。
「命!」
銀髪の妖夢と呼ばれた少女が黒髪の少女の名前を呼ぶ。
「な、なんですか!」
命は隣を走る妖夢の方を見やり、発言を促す。すると妖夢はニコリと笑ってこう言い放つ。
「こうして2人だけで走るのも楽しいですねっ!」
傍から見れば仲睦まじく走っているだけに見えるかもしれない。しかしその後には地獄、そう、一部の人間からすれば地獄の様な光景が広がっていた。赤い甲殻に身を包み、鋭い爪のある前足を掲げ、2人を追い掛けているのはキラーアント。硬い甲殻と鋭い爪、ピンチになると仲間を呼ぶ性質から『新米殺し』と呼ばれているモンスターだ。その数は余裕で20を超えているだろう。
「何処が2人なんですかぁ!?いや確かに2人ですけど!」
「あ、正確には1.5人ですね」
なんでこの人はこんなに余裕があるんだ・・・。と命は思いながら死にたくは無いので自身のステータスが許す限りの全力疾走をし続ける。幾つかの通路を曲がり上の階層への階段がみえてくる。
本来なら簡単に蹴散らせるモンスターだ、キラーアントが新米殺しであっても彼女達は新米では無い。しかし、状況が悪かった。命の刀は折れ、妖夢の長刀もヒビが入っている。
「あそこです!上に続く階段!」
命はそう叫び、横の妖夢の方を見る。その時。
「ブオオオオオォォォオオ!」
突如として本来此処には居るはずの無いモンスターの咆哮が空気を振動させる。それは牛人、所謂ミノタウロスと言う奴だ。
「な?!今のは?!って、妖夢殿?!」
その声に驚き妖夢の方を見やり異変に気付く、隣を走っていた筈の妖夢がいない・・・。これはまずいと考えた命は先程までの逃走と言う選択肢を一瞬で捨て去り、ブレーキをかけながら振り返る。しかしそこには妖夢はおろかキラーアントすら居なかった。
「うわあああああぁぁぁぉぁぁぁ!なんで!何でこんなところにミノタウロスがあぁぁぁ!」
白髪に真紅の瞳を持った少年の名はベル・クラネル。現在は五階層にてミノタウロスに追いかけられていた。ミノタウロスの後ろにはキラーアントの大群。ベルはミノタウロスに追いかけられていた、と言ったが、実際には
逃げるルートが同じ
(
・・・・・・・・
)
だっただけなのだ。もしかしたらダンジョン内で目立つ白色の髪をしていたから混乱した頭でそれを目標にミノタウロスは走っていたのかもしれない。
しかし、ベル本人からすれば二m以上の巨大なモンスターが自分を追いかけて来ている状況な訳で、冷静な判断など出来よう筈もなく、逃げようと躍起になっていた。
「助けてぇぇぇぇぇ!」
「ブオオオオオォォォ!」
ベルもミノタウロスも死の恐怖から逃れるために全力で走っている、次第にベルとミノタウロスの距離は近くなっていき、疲れて紅潮していたベルの顔は青ざめていく。
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