ハーメルン
オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?
8話「私は妹ではなくベートの友達ですっ」
赤い目をした妖夢が消えてゆく。その顔には先ほどの子供の様なウキウキとした表情は無く、能面のように無表情だった。
「・・・ゴハッ・・・!・・・くっ・・・」
ベートは我慢しきれず血を吐き出す。おもむろに脇腹を確認すると左側の脇腹は大きく抉れ、地面は血だまりになっている。ベートは傷口から視線を外し、周りからの視線を無視し、蹴り飛ばし壁に半ばめり込んでいる妖夢の元に歩いていく。
「・・・なか、なか・・・やるじゃねぇ、か・・・妖夢、だったか?」
どうやら気絶しているらしい。ベートの本気の蹴りを当たる直前で回避を試みていなければ今頃上半身と下半身はサヨナラしていただろう。
「・・・ハハッ、仕方、ねぇな・・・」
ベートは妖夢の奮闘を讃えるように笑い、ゆっくりと抱き上げた。
「みんなおきてー!ほらパパは仕事!もう、早く着替えなさい!貴女もよ、学校遅れるわよ?」
「ふぁ・・・おはよう、飯はなんだ?」
「時間が無いから昨日の残りよ、ほら起きなさい!」
「うぅん・・・あと5分・・・」
「1分2分3分4分5分!はい!五分たったわよ!」「それ5秒じゃん・・・」
―顔が乱暴に黒く塗り潰された名前もわからない俺の家族が幸せそうな朝を迎えている。・・・また夢だ、ココ最近見てなかったのにな。
「あぁんもう!ネクタイ曲がってる!・・・よし!さぁ、行ってらしっしゃい!」
「ありがとう。行ってくるよ」
「おかーさーん、私の筆箱知らない?」
「知らないわよそんなの、ほら、一緒に探してあげるから」
―いま、唯一覚えているのは声だけ。見ている夢は所詮俺の願望に過ぎない。ああ・・・早く目覚めてくれ・・・生き地獄は嫌いなんだ・・・。そして願う、どうかもう忘れませんように。
目が覚める。・・・知らない天井だ・・・なんだかんだデジャブになってるなこれ。この人生で既に12回目だぞ、知らない天井だ、やるの・・・。体を動かそうとすると全身から鋭い痛みが走る。グおぉあ痛てぇー・・・タケのアホぉ・・・。なんだよなんだよ、「自分がどれだけ無茶してるか自分で確かめるんだな」とか言って毎回最低限の治療しかしてくれないのはさー、ごめんなさいするとすぐに治してくれるけどさ?にしても
・・・・・・負けたのかぁ・・・思ってたよりショックだな、まぁ、一応脇腹は吹き飛ばしたし向こうも無事ではないだろう。
「ぅ・・・くっ・・・イタタ・・・」
つい声が出てしまう。雑ではあるが自分なりに体を調べてみると腹部に大きな痣が出来ていて、ここを蹴り飛ばされたのだとわかる。他にも腕には若干の違和感がある事、頭に包帯が巻かれていること、服が着せ替えられている事がわかった。おそらく治療をしてくれたのは命や千草だろう、アイツらには頭が上がらないですわこれは。
「ん・・・・・・んぅー・・・」
ん?なんだ?と首を横に向けると千草と命がベットにもたれかかる様に寝ていた。看病しててくれたのか・・・有難い事だな・・・。心配をかけたらしい・・・そりゃそうか、ハハハ。
とりあえず痛む体を無視し、千草と命に掛け布団をかける。しばらく眺めていたいがそれはレディーに失礼というもの、まぁ、俺もレディーだけどね?・・・何か自分で考えていて馬鹿らしくなるなこれ。とりあえず部屋の外に・・・
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