ハーメルン
真剣で恋について語りなさい
たった一人の怒れる男

 ガクトはキレていた。腕組みし、はち切れんばかりの筋肉の代謝で熱気をムンムンとさせてむさ苦しい大男は激怒していた。
 横に座るモロは居心地悪そうにそわそわとしていた。大和は我関せずと携帯を弄っていた。隅っこに座る京は黙々と本を読んでいた。姉さんはおれの頬に爪先を押し付けてご機嫌だった。
 ワン子は大量の寿司を前に「待った」されてお腹をすかせてよだれを垂らしていた。キャップは宅配寿司のバイトを終えて、廃棄なのか賄いなのかわからないが大量の寿司を調達してきたのに雰囲気が悪い秘密基地内に面白くなさそうな顔をしていた。
 そしておれは――どうしてだろう。ガクトの怒りがおれに向いていて気まずい思いをしていたのだ。
 高校生活が開始して初めての金曜集会だというのに空気が最悪だった。
 どうしてこんなことになったのだろう。おれはこの一週間を振り返った。





 ――月曜日。

 登校時に黒歴史確定の痴態をさらすも持ち直す。にょわにょわ言ってる不死川さんが一度泣かしたあとは目に見えてびくびく怯えているのが可愛かった。
 彼女は虚勢を張るタイプのようで、一度牙を折ったら威嚇しながら後ずさりする子猫のようだった。
 Sクラスは選抜クラスという割に特筆する人が少なかった。葵、井上、榊原さんの他に不死川さん――そして揚羽さんの弟の九鬼英雄とその御付のメイドさんくらいか。
 特段発奮する要素が見当たらないクラスに肩透かしをくらう。彼らの選民思想とエリート気取りは自称ドSのような薄っぺらい虚栄心を感じる。膨らみきった自尊心と虚栄心は中身がないから突けば風船みたいに割れそうだ。

 学校が終わってから秘密基地に行くとモロとガクトがいたのでおすすめのオナホとバイブ、ローターについて尋ねるとドン引きされた。
 何に使うんだよ、と訊かれたので「一人暮らしなんだし色々冒険したいじゃん」と答えた。オナホはその通りなのだが、後者の二つについては将来、アナルを滅茶苦茶にされたとき感じることができるように開発に勤しむためである。
 だが自分で開発して目覚めさせたい人がいるかもしれないのが悩みの種だ。
 ガクトはしばらく開いた口が塞がらなかったのか呆然としていたが、戸惑いながらふやけたカップ麺がおすすめだと言った。食べ物は粗末にするな。
 モロは何かショックを受けたようで、konozamaで買えと言い残して去っていった。
 おれは帰ってから泊まる気満々な姉さんを追い出して、ネットで注文したあとオナニーしてから寝た。



 ――火曜日。

 九鬼英雄とメイドの忍足あずみさんと知り合う。
 姉上からお前の話をきかされたとか何とか、生まれついてそうであったかのような傲岸不遜な物言いの自己紹介だった。他の選民思想に被れたクラスメートと違ってどこか憎めない。
「愛しき庶民よ。今日も今日とて勉学に励んでいるな。殊勝な心掛けだ。我も王としての勤めに一意専心しているぞワハハハハ!」なんて初対面のクラスメートA君に言っちゃう天然さは揚羽さんに似ている。権力者としての責務を同い年で果たしているから、畏敬だとか感嘆の念が憎しみより先立つのだ。
 メイドのあずみさんはいい年してぶりっ子だ。しかし何かがおれの琴線に触れ、後ろ髪を引かれる思いになる。なぜだろう、無性に年齢のことで煽りたい。そうすれば彼女はおれが望む、社会的に許容されるギリギリのラインの行為をしてくれる気がする。

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