ハーメルン
真剣で恋について語りなさい
マゾヒスト夜を征く



「まぁ元気だせよ、三河。今日の昼飯おごってやるぜ?」
「おや、顔色が優れませんね。私が保健室まで付き添いましょうか?」
「元気だせよー。ウェイウェーイ」

教室に着くと、Sクラスの仲良し三人組が、半分は優しさでもう半分は愉悦でできている表情で話しかけてきた。
学園にはおれが誰かに振られたという実話が拡散していた。
というのも、否応なく注目を集めるおれが、あずみさんに振られて以降やさぐれていたから、その原因は何だろうと噂好きの学生の間で話題になったのが始まりらしい。
とはいえ、クラスではおとなしい美人……じゃなかった、美少年で通っているおれの実情を知るやつはいないし、大半の者は安直に失恋でもしたんじゃない? と考えた。
 失恋だとしたら、相手が川神学園の生徒の場合噂になってないのがおかしいので、中学生か大学生以上、年下は想像しにくいから相手は年上、少なくとも姉さんより美人でないとおれが惚れる理由が納得できない、という結論に至り。
 まとめて、年上の半端ない美人のOLにおれが一目惚れし、告白して玉砕したという噂が広まったのだった。
 安直極まりないのに、正鵠を射ているのがムカつく。

 まぁ、ここまでは信憑性のないゴシップのひとつに過ぎなかったのだが、今朝、風間ファミリーの面々と登校している最中、まだ噂が耳に入ってないときにガクトから声をかけられた際、

『よう千、振られたからって落ち込むなよ。女なんて星の数ほどいるぜ』
『……なんでガクトが知ってんだよ』
『え、やっぱあの噂マジなのかよ!?』

 先日の件で京と冷戦中だったおれは、てっきり京がバラしたのだと思って疑心暗鬼に返してしまった。風間ファミリーは目立つ。周囲にはおれたちの会話に聞き耳立てている生徒もいて、学園に着くころには登校した生徒全員が知っているのでは、というほど周知されていた。
 そんなに人の恋愛事情が気になるのか。
 ……まぁ、おれは有名人だからな! かーっ! つれーわー! 人気者はつれーわー! 実質学園一くらいしかモテてないからなーっ! おれがもうちょっと不細工で頭悪くて要領が悪かったらこんなに騒がれなかったのになー! かーっ!

 おれは話を耳にして絡んでくるやつらと一通り話をした。



「ヒュホホ、あの三河が女に振られるとはのぅ。どぉぉぉしてもと頼むなら此方が慰めてやってもよいのじゃ。どぉぉぉぉぉしてもと頼むなら」
「フハハハハハハ! 青春しているな三河千! こうして若人は苦い思いを力に変え、酸いも甘いも噛み分けた漢になるのだ……そうであるな、あずみ!」
「そ、その通りでございます英雄様ぁ!」
「ま、これも経験さ。愚痴こぼしたくなったらだらけ部に来い。話くらい聞いてやるぜ」
「ふふ、青春してるわね。甘酸っぱい匂いと、ほろ苦い味がする」
「OH! モモヨ! シンデル!」
「よーう、色男! 影のある良い表情するじゃねえか! 普段は野郎なんて撮らねえんだが、ピンときちまってよ。コンクールの題材に使いたいんで協力してくれ、見返りにお宝何枚かやるからよ」
「ふっ……君も失恋なんてするんだね。ま、恋に現を抜かす暇があるなら、己を高めることに時間を注ぎこむ方が有意義だと僕は思うがね」



 生暖かい目がウザい。平時は嫉妬と羨望が入り混じった視線と態度で敵対しているSクラスの連中も、今日ばかりは優越感と余裕に満ちた上から目線でおれに接してきた。

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