番外編:せんのなつやすみ
千はオブラートに包めないほど勃起していた。先ほどまで難しいことを考えながら、溜めに溜めた性欲を発散させようとパンツを下ろしたときに信子がきたのだ。
千にとっては最悪で、信子にとっては最高のタイミングだった。千の整った顔が近づいてくる。性欲に支配された千は、艶やかな唇を動かして、
「信子は……ムチってどう思う?」
「……え?」
信子は、きっと愛の言葉をささやかれるのだと思った。そしてキスされて、体に触れられるのだと思っていた。
だが、千の口から出てきたのは、一般的に人を痛めつける道具についての感想だった。
「ど、どうって言われても」
「じゃあロウソクは? 縄でもいいけども」
そこまで言われて、信子はやっとSMプレイを要求されているのだと勘付いた。
信子は絶望した。初体験は年上の千に優しくしてもらえるのだと、乙女心に夢見ていたからだ。
ムチで叩かれ、ロウソクを垂らされ、縄で縛られながら痛い思いをして初体験をする度胸はなかった。
「あ、あたしには、まだ早いと思う……」
「……そうか」
信子は力なく答え、千はがっかりして肩を落とした。
信子は、都会は進んでいると感じた。多くの刺激に触発される都会で育った千は、二つしかちがわないのにSMプレイを嗜むまでに成長しているのだと。
まだまだ幼い信子には、それを受け止める自信がなかった。
そして、まさか信子も、自分が千をムチで叩いて、ロウソクを垂らして、縄で縛ることを要求されているなどとは夢にも思わなかった。
その後、信子は気落ちして岐路につき、やがて千はおもむろにバッグからSMのAVを取り出した。
中学最後の夏は、こんな感じで終わりを告げた。
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