ハーメルン
真剣で恋について語りなさい
Fuckin' Perfect!!

 夏が過ぎ、秋が来て、冬になる。そしてまた、春が来るのだろう。
 季節はあっという間に過ぎた。おれが夏休みの半分を禁欲して過ごした地獄の焦熱の日々が、今となっては懐かしい。
 あれは辛かった……川神院にいるあいだ、三人娘の誰かが必ず傍に付き纏っている一種の拷問にも似た日々。
 おれがパンツを脱ぐタイミングをピンポイントで狙って突撃してくるワン子。特に意味もなく部屋にやって来ては本を読むだけの京。必要以上にベタベタして発情させようとする姉さん。
 一人になるタイミングは寝るときだけしかなかった。深夜にこっそり抜こうと考えた。だが、それを察知した姉さんは寝ぼけながら部屋に向かってきた。プライベートスペース以外では落ち着いてオナニーできないおれは、帰省した際に狂ったように抜くまで悶々と白んだ頭で過ごす羽目になった。
 まだ慣れがあるワン子と姉さんならまだしも、夏服の京はきつかった。急成長した胸と比例して丸みを帯びて肉付きのよくなった京の色気ときたら……それが肌の露出多めで、おまけに視線に気づくたびに挑発的に流し目で薄く笑うものだから、ちくしょう。
 追い打ちをかける夏の暑さが、思考力と冷静さを奪い、おれを奇行に走らせた。思い返してみると、ビンタしてもらうためにナンパするのは頭がおかしい。信子の誘いにもたやすく乗ってしまったし……定期的に抜いておけばあの悲劇は生まれなかったのに。

「つーわけで、あんま人をおもちゃにすんなよな。するなら性的なおもちゃにしてくれよ」
『全然上手いこと言えてないしキモイよ、千』

 電話口の向こうで呆れている京の顔が浮かんだ。おれと京はかれこれ三十分は話し込んでいた。
 年が明けて、年末年始の休みで帰省していたおれに京から電話がかかってきた。新年の挨拶にやってきた親戚との挨拶と宴会から解放されたときには、時計は夜の十時を回っていた。
 酒飲みの威勢の良い野太い声に馴染みきった耳に、京の鈴の鳴るような声は、清涼剤みたいに胸にしみた。
 内外の気温差で結露がしたたる窓ガラスの向こうでは、深々と雪が降っていた。予報では、夜は大雪になるが、朝には晴れるそうだ。
朝になれば、視界一面に広がる新雪が、朝陽を純白に染めて輝きを増すだろう。
おれはこたつに足を深々と入れて、暖房が効いた部屋のなかで仰向けに寝っ転がりながら言った。

「勉強の方はどんな感じ? 行けそう?」
『モチ。真剣で行きます』

 力強い宣言がきた。京は川神に戻るために、川神学園の奨学生制度を勝ち取るべく鉄の意思で努力していた。
 風間ファミリーの他のメンバー、特に入れるか怪しいワン子とガクトは死に物狂いで机に向かっている。大和はキャップを勉強の席に着かせるのに苦労しているようだった。
 まあキャップはいざとなれば強運で何とかなるだろう。鍛錬と両立しているワン子はかなり辛そうだったが、きっとやりとげてくれると信じてる。

『それで、優等生の千様は受験一月前でも余裕で女の子と長電話ですか?』
「まあね。話相手も切羽詰まってるのに男と長電話する女の子だし、おあいこじゃない?」
『千と話すとご利益がありそうで』
「お賽銭くれないと祟るよ?」

 なんて益体の会話を繰り返す。今年の風間ファミリーはキャップの見つけた初日の出が綺麗に見える海岸線で夜の海を眺めながら年を越したらしい。その足で川神院に初詣に行ったとか。

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