いっせー×2
兵藤一誠には師匠が居る。
師は、年齢、強さ、知識はもちろんのこと、エロにかける情熱においてすら一誠を遥かに上回る。
「一誠! もっと気張って走らんかい!」
「うっす! すいません、師匠!」
師匠の名は、八宝斎。エロければエロいほど強くなれる拳法、無差別格闘流の達人である。
一誠は、そう教わっていた。
幼かったあの日、紙芝居で見たおっぱいの素晴らしさ。それに魅了された一誠は、立派な達人となるため、八宝斎の下で日夜厳しい修行に明け暮れているのだ。
「待てー!」「死ねー!」「今日こそ、殺す!」
年若い乙女たちの黄色い悲鳴が、一誠の背にそそがれる。
八宝斎による修行の1つ、下着泥棒の成果だ。女性たちの厳しい監視の目を潜り抜けることで気配を隠す術を鍛え、見つかって逃げることで足腰を鍛える。さらに、背後から飛来する様々な危険物を、後ろを見ずに回避することで、敵の殺気を感じ取る力を鍛えることも出来る。
恐ろしく理にかなった修行法だ。ついでに下着まで手に入るのだから、たまらない。
一誠の頭の上に座る師匠、八宝斎。一誠が彼に向ける尊敬の念は、日に日に増すばかりだ。
兵藤一誠、現在高校一年生。最近、屋根から屋根へとジャンプで渡れるようになった。
『情けない……。俺は情けないぞ……相棒……』
天高く、赤龍帝の嘆く秋。
1
「一誠よ、お前には見込みがある。どこぞのウスラトンカチ共とは違って、ワシの全ての技を継承できるだけの才能がある」
「ほ、ホントっすか、師匠! 兄弟子たちよりも、俺、才能があるんですか!?」
「あいつらには、エロが足りん。だが、お前にはそれがある!」
「うっす! エロなら自信があります!」
八宝斎は、この兵藤一誠という金づるをそれなりに評価していた。知り合いの紙芝居屋が捕まったと聞いて、檻の中に会いに行ったところ、彼のことを聞かされたのだ。
そして、八宝斎は一誠少年をささっと騙して小遣いを巻き上げていた。いや、実際強くなったのだから、騙してはいないのかもしれないが。
適当に金をとっておさらばするつもりだった八宝斎。そんな彼が一誠を本格的に指導することにしたのには理由がある。
八宝斎が一誠を、恐ろしく適当に鍛え始めてしばらくしたころ、龍が目覚めたのだ。
一誠の中に眠っていた赤い龍の帝王が。
そして、一誠は八宝斎を本気で尊敬している様子だった。
こいつ、鍛えたら使えるわい。早乙女や天道よりも確実に使える。八宝斎はそう考えた。
「その意気や良し! 一誠よ、おっぱいが欲しいか!?」
「欲しい!」
「己の好きなように出来る。自分のためのおっぱいが欲しいか!?」
「欲しい!」
「マイおっぱいが欲しいか!?」
「欲しい!」
「おっぱい!」
「おっぱい!」
「おっぱい!」
「おっぱい!」
「ならば、いまこそ呪泉郷へ! おっぱいのために!」
「ジークおっぱい!」
多くの格闘家が訪れる修行の地、呪泉郷。
多くの格闘家が訪れたことを後悔する地、呪泉郷。
一誠もまた、お約束を外さなかった。
「兵藤一誠、いっきまーす!」
泉に突き立てられた竹の竿。その上で行われる激しい修行。それが一誠にひとつのものを与えた。
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