日常、転機
季節は変わり、学年も変わり、そしてクラスメイトの面々も大きく変わった。そして、シン自身にも大きな変化があった。
幼い頃より彼を悩ませていた謎の違和感、それがある日を境に突如として消失した。このことはシンにとって喜ばしいことであったが、それに代わる新たな悩みも出来た。
今度は、何故か人に対して奇妙な違和感、あるいは気配といっていいものを感じるようになった。この新たな感覚で分からないのは、全ての人間ではなく、極一部の人間に対してのみ感じていた。シンの身近な人間でその気配を感じたのは元クラスメイトであり友人ともいえる木場、そして、木場と同じオカルト研究部へと所属しているリアス・グレモリー、姫島朱乃、塔城小猫、他にも複数の生徒からも感じていた。
名を挙げた人物は、学園でも知らない人間はいないほどの有名人であるが、そういった人を引き付けるオーラといったものは全く異なる、どこか人とは擦れた超越的なものであった。
一体自分の身にどんな変化があったのだろうか、表面上は静かに、しかし、内側では重く悩むシン。そんな彼の考えを遮断するかのように男の歓喜の声が、耳へと飛び込んでくる。
「すげぇ! これは! おおおおぉぉぉぉ……!」
声の方向に目を向ければ、どう考えても教室で見るようなものではない本を広げ、興奮に鼻息を荒くしている三人の男たち。机には戦利品のように卑猥なDVDなどが山積みとなっている。丸刈り頭の男の名は松田、眼鏡を掛けているのは元浜、そして、最初に声を挙げ、三人の中で最も名の知れた男が兵藤一誠。三人とも悪い意味でこの学園で有名な人物たちである。
男女の比率が3:7のほぼ女子が占めるこの学園において、一切周りを気にせずにエロ本や18禁DVDの貸し借りをする、その神経の図太さには、シンも呆れ半分感心半分であった。一応、クラスメイトになる前に何回か噂を耳にしていたが、実際に見ると何とも言えない気分へとなる。
ふと、シンの視線に気付いたのか、一誠は見ていたエロ本から目を離し、シンの方を見る。
「あぁと……見る?」
「気持ちだけ受け取っておく」
エロ本を指差す一誠にシンは軽く手を振り、丁重に断る。その途端、クラスの女子たちの怒声が響く。
「木場君のお友達の間薙君がそんな本、読むわけないでしょ!」
「このど変態ども! 変態の道に引きずり込もうとしないで!」
「エロガキ!」
「ほんと! 最低!」
容赦の欠片もない女子の罵声。それに対し、今度は松田が吼えた。
「木場の友達がどうしたぁ! エロ本を回し読んで友情を深めるのはなあ! 古来から日本に伝わる由緒正しい男の儀式だ! それが理解できないような女子は去れ! 去れ! それとも無理矢理理解させてやろうか!」
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