ハーメルン
聖闘士星矢~ANOTHER DIMENSION 海龍戦記~改訂版
第14話 激闘サンクチュアリ! 立ち向かえ聖闘士(前編)の巻
神話の時代より常に噴煙を立ち昇らせる火山島。そこでは今より二百数十年程前に一度大きな噴火があったと歴史は記している。
幸いにして大きな被害が出る事もなく、一説には噴火を食い止めたのは若き少年――聖闘士であったとも言われているが、今となってはその真偽について語れる者はいない。
常に熱く滾る大地の力に満ちたこの島は、効能高い湯治場として現在も遠方から多くの人々が訪れている。
そこは、地中海に浮かぶ島々の一つ――カノン島。
人々の知る表の顔と、神秘によって隠され裏の顔を持つ島である。
噴煙と熱波に満ちたその火口。
煙とガスに満ち、生身の人間では立ち寄る事の出来ないその場所で、時折りゆらりと動く影――人影があった。
金色の鱗衣を身に纏った男の姿があった。
まるで『そうするために』あつらえられたかの様に形作られた岩に腰を下ろし、静かに瞑目をしている。
海斗との戦いの後に何処かへと姿を消した男――カノンの姿がそこにあった。
「驚いたな。肉体の負傷だけではなく、まさか鱗衣の破損まで修復されているとは」
「……何の用だ?」
知己の声に、カノンが億劫そうに閉じていた瞼をゆっくりと開く。想像通り、その目には鱗衣を纏ったソレントの姿が映る。
「湯治と言うものは知っているが、噴煙の中七日七晩身を置くならば、だったか。カノン島の伝承、まさかこれ程のものだったとは。しかし、普通の人間ではそれに気付く前に命を落とす」
穏やかな笑みを浮かべるソレント。その表情はカノンの知るソレントに違いはない。
「ならばそれに気付けるのは普通ではない存在。人知を超えた存在なのだろう。海闘士には伝えられてはいない伝承であるならば、それを伝えているのは――」
「もう一度聞く。何の用だ」
しかし、ソレントの言葉の中に含む様な“何か”を感じ取った事で、カノンの言葉にもどこか棘の様な物が含まれる事になる。
僅かに立ち昇ったカノンの小宇宙はまるで拒絶の意思を示すかの様に、周囲に斥力を伴った力場を生じさせていた。
「お見舞だよ。しかし、『傷付いた聖闘士が噴煙に身をひたし再び立ち上がる』だったかな」
力場の圧が増し、周囲の岩肌に亀裂が奔る。
その力場はソレントをも巻き込んでいたが、当の本人には全く意に介した様子もない。
ソレントは海闘士の中でも早期に覚醒した事も有り、海闘士の中ではカノンとの付き合いが最も長い人物である。
カノンが見せるこの不安定さには最早慣れたものであった。
「伝承が……伝えるものなど真実の一端にしか過ぎん。“聖闘士の様な”力ある存在しかこの場所に留まる事が出来なかった、ただそれだけよ」
「……アテナの加護故の奇蹟、その可能性は? 我等海闘士にとってこの地は、この場は毒であったかも知れん」
「くどいぞ。言いたい事があるならばハッキリと言ったらどうだ」
「別に。ただ疑問に思った事を口に出しただけ。他意は……ないさ」
肩を竦めてそう言うソレント。
カノンはそれを苦々しく思いながらも一瞥すると、「そうか」と呟きゆっくりと立ち上がった。
お互いに無言。そのまま暫く。
「フッ、まあいい」
ややあって、先に口を開いたのはカノンであった。
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