ハーメルン
Fallout:SAR
始まりの日


 こんな状況だというのにどこかウキウキとした気分でヴォルトスーツからフル改造済みのアーマード軍用戦闘服に着替え、アーマーも胴に両手足にと全部位を装備した。
 アーマーはもちろん、すべてレジェンダリー防具だ。防御力も高いがそれぞれに固有の特殊効果があるので、かなり重いがきちんと装備する。

 ピップボーイのインベントリにはスクロールするのが面倒なほどの数のパワーアーマーもあったが、あれを着て動くには大きな乾電池のような消費アイテムが必要だ。それを補充できるかどうかもわからないので、とりあえずはこれでいい。

「武器のショートカットも設定できるのか。拳銃にショットガン、フルオートのライフルにスナイパーライフル。忘れちゃいけないのが、回復手段のスティムパックだな。……よしっと」

 どんなに強い武器や防具を身に着けても俺は俺なのだが、やはり安心感が違う。そんなはずなんてないのに、なんだか強くなった気分だ。

 最後にゲームでも現実でもいつもしていた黒縁メガネをかけ、俺は辺りを見回した。

 錆びた車の残骸。
 ひび割れたアスファルト。
 伸び放題の雑草に、これまた錆びて赤茶けたガードレール。
 俺が立っている交差点の左右には崩れかけた家。少し先には、倉庫のような大きな建物も見えた。

「さて、どうすっか……」

 水や食料、それに金は使い切れないほど持っている。
 ならば人が多く暮らす街かせめて集落でも見つけて、金か物々交換で安全な建物を確保してしまえばとりあえず安心だろう。

「まあ、その街を探すのが大変なんだけどなあ。ピップボーイの地図は真っ黒だし、こんな交差点に見覚えもない。とりあえず歩くか」

 フォールアウト4では自身のPerception、日本語に訳されると状況認識力となっていたSPECIALの数値で視界の中央下部にマーカーが表示され、敵や近くにあるロケーションを表示してくれた。

 今の俺にもそれは見えてはいるのだが、なんせPerceptionはたったの3。敵を示す赤いマーカーが見えていないからといって油断はできない。

 力がなくても使えそうな武器、消音器付き小型拳銃のデリバラーを右手にぶら下げて歩き出した。
 ブーツの底が、砂を噛んで鳴る。

「しっかし、マンガやラノベみたいに異世界転移かよ。それもこのフォールアウト4なんて極悪非道な世界が現実なら、俺はどうなっちまうんだか」

 それでも、これが夢や幻だったとしても、俺に死ぬ度胸なんてあるはずもない。どうにかして、生き残るしかないのだ。

 レトロフューチャーがコンセプトのポストアポカリプス世界が舞台なだけあって、車の残骸はどこかユーモラスな造形をしている。
 それらの間を縫うように歩きながらアスファルトを踏んで進んでいると、右手に崩れていない建物があるのに気がついた。

 造りからして、食料品などを売っていた個人商店であるらしい。
 ゲームにはなかったアイスクリームの冷凍庫が見える。

「金と物資に余裕はあるが、ここがどこか知るためにはざっとでも探索しておきたいな。フォールアウト4の大都会、ダイヤモンドシティーは有名な野球場の跡地だ。崩壊前の地図でもあれば、その場所は確認できる」

 人間を襲うバケモノ、クリーチャーは建物の中にいる事も多い。

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