始まりの日
間に合わない。
衝撃。
事故に巻き込まれたバイクのドライブレコーダーを、有名な動画投稿サイトで見た事がある。
俺の視界は、まさにそんな感じだった。
痛みを感じる余裕すら、ない。
「……いってえ」
もう一度。
もう一度デリバラーを構えて撃てと他人事のように考える。
起こっている出来事に現実感がなさ過ぎて、まるで映画館でスクリーンの向こうに声援を送っている子供にでもなった感じなのだ。
起き上がれ。
銃を、デリバラーを構えろ。
そして、撃て。
グールは俺を殴り飛ばし、その拍子に姿勢を崩していた。
だが今はまた立ち上がり、干からびた瞳で俺を睨みながら拳を振り上げて迫っている。
時間が、酷くゆっくりと進む。
ボロ布で局部だけをかろうじて隠しているグール。
その動きが、はっきりと見えた。
「死ねるかあっ!」
デリバラーを持ち上げ、トリガーを引く。
ガチッ
弾が出ない。
衝撃も、音もない。
死ぬのか?
俺はこんな場所で、なぜこんな目に遭っているのかもわからずに死ぬのか!?
「嫌だ。嫌だーっ!」
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