国道一号線
こんなクズでも、死ぬ前に泣くのか。
これまで何人殺したか知らないが、それでも死にたくないと泣くのか。
悪党の涎に血が混じっている。鼻水まで垂れ流して。
「俺は、静かに死のうと思う。これから何人殺すかわからんが、だからこそ自分だけ死にたくねえなんて言わねえでよ」
「いでえ、いでえよぅ……」
「今、楽にしてやるよ」
「い、いやだ。じにだぐねえっ!」
「さんざん殺しといて、そんな都合のいい話があるか。あばよ」
「うあ、うああっ」
パシュッ
人を殺すのだから、殺される覚悟もしよう。
そう考えながら撃った銃弾は、狙い通りに悪党の眉間を撃ち抜いた。
ゴツッっと悪党の頭がアスファルトを叩く。
悪党がピクリとも動かなくなるまでその死に顔に銃口を向けていた俺は、大きく息を吐きながらマガジンを交換した。
「アキラ……」
「怪我はねえよな、シズク?」
「あ、当たり前だろう。それより顔が真っ青だぞ?」
「気にすんな」
童貞を捨てただけだ。
「アキラっ!」
駆け寄ってきたミサキが、叫びながら俺に抱き着く。
銃を持っていない方の手でその頭を撫でると、シズクの手が伸びて俺の唇からタバコを奪った。煙が出ていないので、どうやらフィルターで火が止まった事にすら俺は気がついていなかったらしい。
「まさかアキラは、初めて人を……」
「当たり前でしょうがっ! あたし達はね、こんな野蛮な世界のアンタ達とはっ」
「それ以上は言うな、ミサキ」
「……まずは、里に戻ろう」
「悪いが、そうさせてくれるか。なんか、熱っぽくてよ……」
それに、地面が揺れている。
そこまで口に出来たかわからないまま、俺は酷く柔らかい、いい匂いのする何かに倒れ込んだ。
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