基地
「やっぱりそうなんだあ。早く会いたいね」
「だなあ」
観光案内のパンフレットには、動物園や植物園、遊園地などの写真が掲載されていた。
どれもそんなに規模の大きそうな施設ではないが、浜名湖の観光施設は俺が思っていたよりずっと充実していたらしい。
中でも目を引くのは、地図にいくつもあるマリーナという文字だ。俺達がいるこの場所も、ヨットハーバーではなくマリーナという名前になっていた。
「マリーナって、たしかヨットハーバーの別の言い方だよな?」
「だね。葉山に置いてあったうちのクルーザーも、なんとかマリーナって場所にあったよ」
「自家用クルーザーって……」
「え、変?」
「変じゃねえが、ムカつく」
「なにそれ酷いっ!」
「アキラ、これ」
「ん? ああ、そりゃ戦闘機の写真だ。帝国軍でも自衛隊でもなくて、防衛軍って名前なんだな。日本防衛軍空軍基地。って、空軍があったんかよ!」
「でももしそこに核が落ちてたら、ここだって無事じゃないよねえ?」
「そりゃそうだろ。だからこそ基地は無事な可能性が高いんだ。セイちゃん、101のアイツは、師匠はここの事を何か言ってなかったか?」
セイちゃんがフルフルと首を横に振る。
ならばこの空軍基地は、少なくとも101のアイツに荒らされてはいない。
空を飛べる戦闘機なんて残ってはいなくても、警察署なんかに残されているのよりずっと強力な銃が使い切れないほどありそうだ。
「まさか、飛行機を探しに行くつもり?」
「さすがにそりゃねえって。でも空軍でも敵の陸上戦力から基地を守る役割の部隊はあったはずだし、浜松の山師達が手を付けてねえなら宝の山だぞ」
「いつになったらそんな場所に行けるのかなあ」
「レベル50くれえかな」
「そんなに? 気が遠くなるって」
観光案内には他にも大型のショッピングモールや、バイクで競艇のようにレースをするオートレース場などの写真が掲載されている。
「信じられるか。ゲームが現実になると東京名古屋の中間にある県庁所在地でもなんでもない、ありふれた地方都市ですら探索に何年もかかりそうなんだぜ?」
「まあ、退屈はしなさそうね。あ、そういえばアキラが悪党を倒したらレベル6になったから、Bloody MessってPerksを取ったよ」
「げえっ!」
「な、なによ……」
「ははっ。取っちまったもんは仕方ねえさ。晴れたみたいだから、俺は宿舎を用意する。道具は出しとくから、ここの片づけと掃除を頼んでいいか?」
「うん。特殊部隊の待機所にするんだよね、任せて」
「悪いな。せっかくの休日だってのに」
俺はあまり駐車場から離れないし、ドッグミートとEDーEもいる。それに敵がいないのがわかり切っている狭い建物の中なので、2人だけにしても大丈夫だろう。
雨上がりの外に出てどこにどんな宿舎を建てるか決めるため、駐車場にある車の残骸をジャンクに分解しながら駐車場を歩き回った。
ゲームと同じように、大きな車の残骸が一瞬で消えてピップボーイのインベントリに収納されるので楽なものだ。
「駐車場の左右の水面にもボロ船が山ほどある。しばらく鉄には困んねえな、こりゃ」
食料調達部隊には、タイチの思い人をはじめとして女も5人ほどいた。
俺が顔を合わせたのは10人ほどだが、ちゃんと揃えば18人いるらしい。全員が特殊部隊に志願する保証はないが、人員が増えるのを見越して女性宿舎を10部屋、男性宿舎を20部屋も準備すれば充分だろう。
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