出会い
日本語に訳すなら敏捷性となるステータス、Agilityも3しかない俺は、必死でその後ろ姿を追った。
やけに流線型のパーツが多い未来的な車の残骸のボンネットを蹴り、ジャンプしながら交差点の向こうを見て我が目を疑う。
「ED-E!?」
フォールアウト4ではなく、その前作のフォールアウトNVに登場した空を飛ぶボールのようなコンパニオン。
そのED-Eが、セーラー服の少女を庇うように宙に浮いて内蔵された電気光線銃を撃ちまくっている。
敵は、やはりフェラル・グール。
だが数が多い。
倒れているのを入れなくても、5匹。意外と近い場所で戦闘が始まっていたようだ。
もう先頭のフェラルの喉元にドッグミートが果敢に跳びつき、地に倒して揉み合っているのが見えた。
そのせいでED-Eでもセーラー服の少女もなく、無防備な背中を晒すドッグミートに1匹が向かう。
「させるかよっ!」
拳を振り上げたフェラル・グール。
相棒の背中を守るのは俺の役目だという事を証明するため、駆け寄って銃床でぶん殴った。
「ぐぎゃっ」
タアンッ
すかさずもう1匹を撃ち殺す。
ぶん殴ったグールは倒し切れていないようだが、これで立っているのは残り2匹。
その1匹を、ED-Eが撃ち倒す。
「やるじゃんか、ED-E。さすがモハビでの相棒だっ」
「きゃあーっ!」
道の真ん中で腰を抜かしている少女に、残ったフェラル・グールが襲いかかっている。
俺もED-Eも、位置が悪くて銃は使えない。そうすれば、少女は怪我をするか最悪の場合は即死。
「ピップボーイがあって9mmを持ってんだ。VATSを使え、お嬢ちゃんっ!」
「え。な、なにっ?」
「あぶねえっ」
「ビーッ!」
間に合わないのを悟ったのか、まるで悲鳴のようなED-Eのブザーが響く。
そう喚くなよ、元相棒。オマエの今の相棒は、どうにか助けてやる。
まあ、怪我で済めば御の字か。
思いながら、少女とフェラル・グールの間に跳び込んだ。
「ぐあっ!」
モロにフェラル・グールの拳を食らい、HPバーが3分の1ほど消し飛んだ。
それでも、無様にぶっ飛ばされる訳にはいかない。
お漏らしをしながら濡れた白いパンツを隠そうともしない美少女JKには、そのカラダで命を救った借りを返してもらわなくては殴られ損だ。
せいぜいカッコつけておかないと。
「知ってっか、ミイラ野郎。主人公のゼロ距離射撃ってのは、どんな敵のどってっぱらも撃ち抜くんだぜ?」
タアンッ
軽さ重視の武器なので少しばかり気の抜けた銃声だが、フェラル・グールはちゃんと倒れてくれた。
同時に、ゲームで聞き慣れたレベルアップの音。
「ふうっ、やっとレベル2か。お、残りは倒してくれたんだな。ありがとよ。ドッグミート、ED-E」
「わんっ」
「ぴいっ」
「ははっ。ゲームと違って、かわいらしい声じゃねえか。ED-E」
生き物を殺した嫌悪感のような物はあまり感じない。
それでも銃で敵をぶん殴り、そのどってっぱらを撃ち抜いて殺した、高揚感のようなものが俺が俺でなくなってしまったようで気色悪いので、それを誤魔化すように胸ポケットからタバコを出してライターで火を点けた。
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