廃墟の街へ
「無改造だとパワーフィストはダメージ40、攻撃速度ミディアムで重さが4。デスクローガントレットは、50のミディアムの10だな。もちろんどっちも各種レジェンダリーを取り揃えてありやすぜ、お嬢様?」
「なら、少しでもダメージの高い方かなあ」
「デスクローガントレットか。手持ちのレジェンダリーは、それなりかな。とりあえずは機敏でいいか。ほら、構えてれば移動速度が上がるって効果の付いたデスクローガントレットだ」
「ありがとー。これがあれば百人力ねっ」
もう少し強く言い聞かせ、たとえ命中しなくても銃を持たせるべきではないのか?
そんな考えも浮かんだが、俺から少し離れて空手の型を披露したミサキがいい笑顔で頷いたので言葉にはしないでおいた。
舞うように体を動かしていたミサキを眺めながら火を点けたタバコを踏み消し、地面に並べた武器を収納して腰を上げる。
「そんじゃ、そろそろ行くか」
「ちょっとちょっと。ナントカって必殺技、まだ教わってないわよ!?」
「VATSかあ。あれは敵がいないと試せねえんだよなあ。まあいい。VATS、そう強くイメージしてみろ。そうすると俺やドッグミート、EDーEがターゲットされる。そしたら攻撃しようとイメージすれば視界の隅にあるアクションポイントを使って、それがなくなるまで連続で攻撃が出来る。フォールアウトNVの仕様なら俺のVATSとは違って時間を止めて攻撃できるから、かなり強力なはずだぞ」
ミサキが正拳突きを繰り出す構えを取り、静かに目を閉じた。
「……ふうっ。なんとなくだけど理解したわ。危なくアキラを2回も殴るとこだったけど」
「こわっ。お互いにフレンドリーファイア、誤射にだけは気をつけような。だからVATSを使う前はそう大声で叫んで、相手の返事を聞いてから使うんだ。俺の場合はマガジン交換をする時にも、リロードって叫ぶ」
「でも必殺技を使うのって、だいたいがピンチの時でしょ。そんな余裕、ある?」
「咄嗟に使うしかない時は、そうするしかねえさ。じゃなきゃ、死ぬ」
「……ゲームみたいに、生き返ったり出来るって保証はないんだもんね」
「そういう事。さあ、行くぞ」
「うん」
「ドッグミート、ミサキを頼むぞ。EDーEは索敵だ」
「わんっ」
「ぴーっ」
家々は小さめの木造が多いからか、道の両側はフォールアウト4の舞台であるボストンより荒れ果てている感じだ。
車の残骸がそんなにないのはここが田舎だからか、それとも当時の日本が貧しかったからだろうか。
クリーチャーを探しつつ廃墟の街を歩き回っていると、ミサキ達と出会った交差点の先にあった工場の敷地を抜けた辺りで広い水辺にぶつかった。
「これは、川か?」
「ううん。見て、右の方はもう海だよ」
「どうりで来た時から磯臭かった訳だ。なら、左に進むか」
「うん。建物はメチャクチャに壊れてるのが多いけど、道路なんかはしっかりしてるから線路も残ってるはず」
「だなあ。とりあえずはそこのベンチにでも座って、水分補給しとけ。もう2時間は歩いてる」
「うん」
見た目は美しい川の流れを眺めながら、きれいな水を飲んでタバコを吹かす。
ドッグミートにも皿に水を入れて飲ませたが、EDーEは俺が出したオイル缶をブザーを小さく鳴らして断った。やはり機械の体だからか、そう頻繁にオイルを補充する必要はないらしい。
[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク