ハーメルン
Fate/kaliya 正義の味方と桜の味方【完結】
第3話 三騎士乱戦





「「「この2人――できる……!!」」」

 数度の交差、その僅かな激突で偶然か必然か、3人は相対する2人に対して同じ印象を抱いた。相手にとって不足なし、これぞまさに英雄同士の闘いに相応しいと。
 もっとも、結論は同じでも道筋は全く違うのだが。
 
 ランサーは強敵と出会うことそのものに対する歓喜と高揚を
 セイバーは純粋な敬意と誇りを
 アーチャーは……どこか達観したような悟りと諦めを

 根本の異なる同じ意志のもとその中では1番息を荒らしていたアーチャーは一度深く息を吸い込むと肺の中を空っぽにするように、それと一緒に押し潰されそうなプレッシャーも吐き出した。そのまま左腕で汗を拭う。

 ――やはり真っ向勝負では分が悪いか……だが……

 お互いに力量を把握した以上ある程度疲弊すれば無理をせずに間を取る。そうしなければ次の瞬間には首が吹き飛んでいるのは自分自身だと3人とも理解しているからだ。
 その間を利用して、アーチャーは周りに見えぬよう口だけ歪めてにやりと笑った。








――――――

「ちょっと待て、今なんて言ったアーチャー」

「む、正面から乗り込むといったのだが……何か問題でも?」

「大ありだ! お前弓兵だろ? なんでわざわざそんなこと――」

 ランサーの宣戦布告が届いたのは何もセイバーだけではない。間桐邸で遅めの夕食をとっていた雁夜とアーチャーにもその報せは届いていた。もっとも、雁夜に感じられたのは違和感程度で、アーチャーに説明されるまでその概要は掴めておらず、やはり英霊とはすごいものだと改めて思い知らされたものなのだが。
 しかし、その後にアーチャーが当たり前のように語った言葉はそんな雁夜の感心すらいとも容易く吹き飛ばした。



「弓兵だからと言って前線に出てはいけないという決まりはないだろう」

「そりゃそうだけど……こんな風に誘ってくるってことは腕に覚えがあるってことだろ? そんなんセイバーかランサーか、とにかく白兵戦に自信がなきゃ出来るわけがない……なんでわざわざ不得手な戦法で相手の得意なものに挑むんだよ」

 洗っていた食器を放り出してアーチャーに食って掛かる雁夜の意見は非の打ち所のない正論である。
 戦地に赴くというのはまだいい。弓兵の目は鷹のそれ。遠くからでも敵戦力の把握には事欠かない。更にまだ見ていないもののアーチャーと言うからには狙撃にも自信があるはずだ。上手くやれば隙を付いて一人二人消すことも不可能ではない。だと言うのになぜそのメリットを全てかなぐり捨てるのか……理解できるはずもなかった。


「無論、リスクは承知の上だ。しかしながらそれ以上に得るものの方が大きいと判断した」

「得るものだって?」

 そんな雁夜にこともなげにアーチャーは言い切った。

「ああ、君も覚えていると思うが、そもそも私はそこまで高名な英霊ではない。そして君も、誤解を恐れずに言うならばそこまでのバックアップを期待できるマスターではあるまい。となれば必然的にある程度のイレギュラーを起こさねば勝ち目が薄いのはわかるだろう?」

「そりゃ……まあ……」

 自身が優れたマスターではないのは雁夜とて承知している。元々枯れかけの間桐の血、それもそこから一度は目を背けたのだ。いくらこの一年の修練があると言ってもその差は簡単に埋められるものではない……そう、冷静に判断すれば憎き遠坂時臣にも遠く及ばないのだと理性で理解できるほどに。

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