ハーメルン
インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~
第18話 蠢く悪意と姉の善意
月の無い夜よりも尚暗い部屋の中、無機質な光沢を放つ円卓と、周囲に浮かぶ6つのモノリス。
1から6までのナンバーが刻まれたモノリスの内、2と4のナンバーがほのかに光を放ち、存在感を示していた。
「――――――天才様にも困ったものだな。そっちの被害はどれくらいだ?」
「散々たる有様だ。被害は恐らく2億ドルを越える。そっちは?」
「更に酷い。研究用
メインフレーム
(
コンピューター
)
に、通信用静止衛星。だが何より痛いのが、VTシステム関連が根こそぎやられた事だ。施設もデータも念入りに破壊してくれたよ」
「技術者が無事なら、どうにかならないか?」
「出来なくはないが、基礎データから念入りにやってくれたおかげで、再生産するならプロトタイプからデータを抜き出す必要がある」
「それは面倒だな。アレはもうドイツ機に組み込んでしまったんだろう? 今更抜き出すとなると手間だぞ」
「ああ。しかし、あんな直接的手段に出てくるとは、読み誤ったか」
「NEXTか?」
「幾つかのデータには目を通したが、化け物だな。流石天才自らが“次世代”と名付けただけはある」
円卓中央の開いている空間に、大小様々なウィンドウが現れ、今まで計測された各種データが表示される。
そのどれもが、既存ISを歯牙にもかけない圧倒的な数値を示していた。
「自らが、か? どこかで作られたという話らしいが?」
「まさか、そんな与太話を信じているのか? 世界への武力供給は全て我々が握っている。あんなものを作っていたなら、我々が気付かないはずが無い。それこそあの天才級の化け物でもない限り、隠し通すなど不可能だ」
「この席に座るもので、あんな話を信じているものなど誰もいないさ。アレは、間違いなく博士のオリジナルだろう。――――――ところで、
超音速旅客機
(
SST
)
の一件は誰が仕組んだんだ?」
声には、「お前だろう?」という確信に満ちた響きがあった。
と同時に、ナンバー3のモノリスが存在感を現す。
「誰かしらね? まぁ、中々面白い見世物だったわ」
「そうだな。確かに中々面白い見世物だった。まさか大気圏内で時速7000kmオーバー叩き出すとはな」
「NEXT本体のデータは無理でも、あの大型外付けブースターのデータ位は手に入らないの? 海上でパージしていたから、残骸からデータが取れると思うけど?」
「やってないと思うか? 技術部の者が言っていたが、『ここまで芸術的な自壊処置は初めて見た』だそうだ。アレから拾えるデータは何も無い」
「本当? 何か隠してるんじゃないの?」
「なら後で貴様の所に送ってやる。残骸処理をしておいてくれ」
「お断りするわ。自分の所で処理して。――――――で、ソレを扱う当人については何か分かったの?」
ナンバー5のモノリスが存在感を現す。
「・・・・・恐ろしい程何も分からなかった。初めてその活動が確認されるまで、何一つ痕跡が残されていない。コレが情報操作の結果だとしたら、恐ろしい手腕だな」
「全くか?」
「そう、全くだ」
普通なら、それは無能と言われてもおかしくはない。
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