ハーメルン
インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~
第05話 シャルロット

 
 俺(=薙原晶)が次に目覚めたのは、翌日の昼過ぎだった。
 窓から外を眺めれば、未だに雨がしとしとと降り続いている。
 身体も、多少動ける程度には回復しているが、完全回復には程遠い。
 
「・・・・・これから、どうするかな」
 
 思わずそんな事を呟いた時、コンコンと部屋の扉がノックされた。
 
「どうぞ。起きてますよ」
 
 入ってきたのは、黒と白を基調としてオレンジのラインが入ったジャージという動きやすい格好をした外人。
 昨日目覚めたときは意識がはっきりしていなかったせいか分からなかったが、長く綺麗な金髪とアメジスト色の瞳は、素直に何処かのお姫様を連想させた。
 
「気がついたんだね。大丈夫?」
「ああ。ゆっくり休ませてもらったおかげで随分楽になった。――――――ありがとう」
 
 ゆっくりと上半身を起し、頭を下げる。
 と、何故か顔を真っ赤にして横を向かれてしまった。
 何か気分を害するような事でも言ってしまっただろうか?
 そんな思考が脳裏を過ぎるが直後、その理由を理解し、確認の為シーツの中を覗き込み・・・・・・・・・・俺も思わず赤面してしまう。
 服を着ていないのだ。
 いや、着ていない理由は理解できる。
 俺は森の中で血だらけだった。
 手当ての為に、ISスーツを脱がして手当てしてくれたんだろう。
 他人を呼んで欲しくないといった言葉を律儀に守って。
 だから恥ずかしがる必要なんて無い。無いのだが・・・・・・理性と感情は別物らしい。
 いや、考え方を変えよう。
 ここで俺まで恥ずかしがったら、手当てをしてくれた相手に失礼だ。
 何でもないかのように自己紹介でもして、話を変えよう。
 
「そ、そういえば自己紹介がまだだったな? 俺の名前は薙原晶。君は?」
「え、あ、うん。ぼ、僕の名前はシャルロット」
 
 沈黙。
 見事に会話が続かない。
 焦る俺。
 
「あ―――、と、とりあえず傷の手当と、人を呼ばないでいてくれてありがとう」
「ううん。そのくらい何でもないよ。でも良かった。顔色も随分良くなっている」
「そんなに酷かったのか?」
「酷いなんてものじゃなかったよ。見つけたのが手当てが出来る僕じゃなかったら死んでたよ」
 
 再び沈黙。
 今度は気まずい。
 どうしようか?
 本当の事なんて話せるはずもない。が、それなりの事を話さなければ、助けてくれた相手に失礼だろう。いやいや、変な事を話せばそれこそどんな厄介事に巻き込んでしまうか分かったものじゃない。
 悩む俺。
 丁度その時、盛大に腹の虫が鳴った。
 そういえば、最後に食べたのは作戦前の栄養ドリンク1本だけだったな・・・・・。
 
「何を悩んでいるかは知らないけど、まずはご飯にしようか? お腹が膨れれば、きっと良い考えも浮かんでくるよ。後、ISスーツも洗濯してあるから持ってくるね」
 
 そう言って部屋から出て行くシャルロットの後姿を眺めていると、今更ながらにふと思った。
 シャルロットって、ISの原作に出てくるあのシャルロットか? まさか・・・・・な。
 確認しようと思えば方法は幾らでもあるんだが・・・・・数瞬迷い結局しない事にした。
 相手がこっちの事情を聞いてこないのに、こっちが相手の事を探ってどうする。

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