死んだら終わり。考えてみれば当たり前のことである。
「メガンテェェェ!」
「ピギャー!」
今日も今日とてスライム狩り。
レベルはなかなか上がらない。
スライムを3匹倒して得られるEXPはたったの5。
……おい、3で割り切れねぇぞ、どうなってやがる。
苦い薬草を噛み、苦い水薬をあおる。
今の俺では、これだけでほぼ全快するだけのHPとMPしか無い。
レベル7。異世界転生してからおよそ一ヶ月。
対岸には魔王城が見えているというのに、俺はどうすることもできやしない。
……ゲームの時はにくい演出程度にしか考えてなかったけど、リアルとなるとこれは相当胃に来るものがあるな。
◆ ◆ ◆ ◆
神の手違いとやらで死んだ俺は、某RPG大作の初代の世界に転生することを薦められた。
勇者として、1個だけ特典ありで。
欲張って考えた挙句、「主人公補正のバリバリ強いやつ」と言ったら渋い顔をする神。
曰く、「もっと具体的に。RPGなめてんのか」だと。
あろうことか、「動画サイトにアップするのに、チート(特典)で下手に俺TUEEEしても全っ然!面白く無いだろが!」とキレだす始末。
俺があっけに取られているうちに、勝手に「特典はメガンテ打っても確定瀕死止まり!」「ついでに生き返れない縛りね!」と「ついでに主人公補正?コミュ症でも勇者できてればモテるようにしてやんよ!」と特典を決められ、笑いながら送り出されることになる。
大事なのは、この一点。
死んだら終わり。
ファンタジー世界ですがリアルに死ねる。
勇者 Lv.1 ♂
HP/MP:24/2
初期装備
頭:なし
胴:布の服(ぶっちゃけ死んだ時に来ていた私服)
武器:棒きれ
盾:なし
特技:メガンテ
特典スキル:
ザオラルガード(ザオラル系の呪文への完全耐性、蘇生アイテムも効かない)
メガンテマスター:メガンテを使っても必ず一回瀕死になる。
……はじめからMPが2だけあるのはメガンテを打てるようにするためだな、間違いねぇ。とか冷静なフリをして現実逃避をする。
「今度(・・)の勇者は大丈夫かのー……」
転生した直後にラダトーム城の王様に心配そうな顔でこう言われた。
俺は泣いていい。
◆ ◆ ◆ ◆
ピロピロピロ―
この音は……
「レベルが上ったか……」
今日だけでスライムを焼殺すること、7回目。
スライムが貨幣に化けるのと同時にその音はした。
祈りながらウインドウを開く。
どうか、新しい特技を覚えていますように。
「どうか……」
果たしてそれはそこにあった。簡潔に2文字。
「……いよっしゃああ!《ギラ》だぁぁぁぁ!」
ギラ。
炎の壁を生み出す初級呪文。
俺はレベル8にしてようやく、使い勝手のいい全体攻撃呪文を覚えたのだった。
《薬草》と《魔法の聖水》のために、初期費用はそこをつく直前だった。
これでようやく、まともなロールプレイングができる!
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