セーブデータその4『うげぇ…………嫌われちった』
戦闘中の親友は、びっくりするほど手慣れたように、モンスターを狩っていた。コレが、前世でのショウなのか?
[(u_u)]
「シッ!!」
手刀一閃。ジャイアントアントの首元を、腕だけで刎ね飛ばすショウは、こびり付いた体液を振り払ってこんなことを言った。
「あーあー…………全盛期に比べて、どうにも鈍ってるなぁ…………」
『鈍ってる』。その言葉は、俺とイシュラを戦慄させるのに十分だった。
「お、おいおい。丁寧に首を掻き切ってるように見えるんだが?」
「コレで鈍ってる…………というかやっぱりあたし、ショウさんがウォーザードだなんて信じられませんよ!?」
そんな風に喚く俺たちを一瞥して、ショウは更に一言。
「全盛期なら、手刀でも切断面は綺麗だった。見ろよコレ、ガタガタだ」
促されて、ジャイアントアントの飛ばされた首元を見るが…………確かに、引き千切られた様にガタガタだ。寧ろこっちの方が怖いんだけどな。
「それに甘いぜイシュラちゃんよ。魔法使いだからこそ、近接は大事なんだ」
「え、だって、魔法使いって敵に近付かなくても攻撃できるじゃないですか」
「そうだな、確かにそうなんだ。じゃあ、近付かれたら?」
「それも、魔法を使えばいいんじゃ?」
何を馬鹿なことを、と言わんばかりのイシュラ。だが、相棒だからこそ次にショウの言うことが分かってしまう俺は、先に口を開くことにした。
「じゃあイシュラ、剣士が剣を振るうのと、魔法使いが呪文を唱えるのと、どっちが速いと思う?」
「えっ……と、同じくらい、ですか?」
「ショウ」
「あいよー」
俺とショウが、一斉に構えを取る。
そして、
「シッ!!」
俺は、十得ナイフで素振りする。
そして、俺が振り始めたタイミングで詠唱なされていたファイアーボールが、遅れて前に飛び出て行く。
「さってとーイシュラちゃん。どっちが速い?」
「……剣を振るう方が速かったです。でも、それってユーゴさん程凄いからそうなったんじゃないんですか?」
「そうかも知んない。確かにユーゴはレベル78のゴーデスナイト。力強さも速さも超一流。でも、ぶっちゃけ他の戦士職の人の剣を振るスピードと比べたら詠唱する方が遅いしね。なんならイシュラちゃんにも負けるかもよ?」
そう言い終えると、ショウは構えを取る。イシュラもそれを察して剣を構える。そして、
「ていっ!」
威勢良く、鉄の剣が振り下ろされる。そしてそれから一拍遅れて、ファイアーボールが放たれる。
「ね?」
「そうです、ね……」
「更に言うと、魔法職は詠唱中隙だらけになる。その間に攻撃を喰らうとマズイし、詠唱も中断されかねない。そもそもが、近寄られなければいいと思うかもしれないが、どれだけ気をつけても、不測の事態というのは起こり得ることだ。そこで、」
ビュッ!! と、風を切る音と共に、ショウの左腕からストレートが放たれた。
「コレだ。確かに、戦士職のそれと比べたら、非常に見劣りするし、威力も出ないし、こっちの腕が逆に潰れかねない。でも、コレで相手の隙を作ることができれば、それは魔法職にとっての勝機になり得るし、最悪の『死』という事象を回避できる」
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