あやかが再び学校に来るようになってから、私たち三人の一緒にいる時間は更に増えた。
あやかと明日菜は相変わらずしょっちゅう喧嘩していたが、前よりもお互いを認めている事が目に見えて分かった。
転校してきたばかりの明日菜は少し暗く大人しそうに話していたが、次第に明るい性格に変わっていき、今では少しうるさいほどだ。
学生時代の密度は濃い、と世間一般では言われているが、その知識をもって実践しても、月日はあっという間に過ぎていった。教室で騒ぎ、先生に迷惑をかける1,2年生の時期は過ぎ、段々と先生に反抗しだす子が現れる3,4年生の時期も過ぎ、今や小学校の高学年と呼ばれる年代になろうとしていた。
私は5―bと書かれた札を掲げる見慣れぬ教室のドアを開ける。私の横にはいつも騒がしく喧嘩をする二人の姿はない。二年毎にクラス替えが起こるため、ついに別々のクラスになってしまったのだ。
あやかと明日菜は3,4年生の時も皆同じクラスだったため、次も一緒だろうと勝手に思っていたのか、クラス発表の紙を見て震えていた。
「…………きゃ、却下ですわ!! 七海と別のクラスだなんて認められませんの!! 待っててくださいね七海!! 今すぐお父様に連絡して理事長に抗議を…………! 」
「わーー! ちょっとまって! いいんちょ少し落ち着きなさい! 」
珍しく騒ぎ出すあやかを明日菜が抑えるという形になっていたのを思い出して、私は少し微笑む。
クラスが替わったからといって、縁が切れる訳ではない。むしろ、学生の時はたくさんの人と知り合い、友達になるのが重要だとも思えるため、別のクラスになったのはいい機会なのではないかとも思った。
教室のドアを開けると、生徒たちがまばらにいた。二度目のクラス替えだというのに緊張した表情のものもいれば、顔見知りと同じクラスになって安心したようにニコニコと話す集団もいた。
「…………おい。どいてくれ」
ドアの前で立っていると、後ろから声をかけられた。丸い眼鏡をかけ、茶髪の髪を後ろで縛った少女が私の後ろで不機嫌そうな顔をしていた。
「ああ。すまなかった」
私は道を塞いでいたことを謝罪して、横に移動する。その少女は私の謝罪に対してぶっきらぼうに返事をして、黒板に書かれている自分の席を確認した後、すぐに席についた。 その様子をみて、教室の隅にいた二人の女子がひそひそと話す。
「…………ねぇあの子ちょっと感じ悪くない? 」
「あー。長谷川 千雨っていったっけ ? 確か昔ワケわからないことで騒いでた子じゃない? 」
「え? なんて? 」
「なんだったかな。世界樹のことあんなの普通じゃないーとか言って、この街は変なことばっかだーとか」
「なにそれ。よくわかんない」
「よくわかんないから浮いてたんじゃない? いつも一人でいた気がする」
本人に聞こえているだろう音量で、女子生徒の二人は話す。だが、肝心の長谷川という生徒はまるで気にしていないかのようだったので、私は無理に触れないことにした。
しかし、その少女が騒いでたという内容が気になった。麻帆良は、確かに普通ではない。
進み過ぎた科学、生物のあり得ない多様性、人を越えた身体能力を持つ者たち、挙げていけばキリがなく、それぞれが限度を超えている。
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