ハーメルン
やはり俺の青春にウルトラマンがいるのはまちがっている
比企谷八幡はその力を見る
「どういう事なの・・・?八幡・・・?」
あー・・・、これ、言わなきゃダメな流れか・・・。
雪ノ下や由比ヶ浜まで気になっている様な表情してるし・・・。
「あー・・・、三浦達が来る前、俺は戸塚だけが強くなる事が本当に部の為になるのかって聞いたよな?」
「うん、でも、僕が強くなったら、それだけ盛り上がるんじゃないの・・・?」
俺の言葉に首を傾げる戸塚は、本当に分からないと言った表情で俺を見ていた。
ぐぉぉぉ・・・!?光ってる!ウルトラマンクラスに輝いてる!!
天使!女神!彩加!!
うん、今はそんな事を言ってる場合じゃないね。
「今の織斑先生がやっていた試合、見ただろ?あんなの見せられたら、やる気失くすんじゃないか?俺なんかがやってもって、お前一人いれば良いじぇねぇかって・・・。」
「あっ・・・。」
この説明だけで分かってくれるあたり、戸塚は賢い、それでいて、純粋すぎるくらいだ。
俺なんかよりもよっぽどウルトラマンに向いてる輝きだな。
だけど、その純粋さ故に一つの答えを見つけると、それで留まりがちになってしまう。
自分が強くなればと言うのも善意からなのかもしれない。
しかし、言い方や見方を変えれば、周りを見ていないとも取れる。
だから、彼は気付いてほしかったのだろう、単独プレーの、力を誇示するだけのやり方の危うさに・・・。
「だからさ、雰囲気から変えていくってのはどうだ?俺は部活に入った事ねぇし、強制入部させられてる身だから何とも言えないけど、出て来たくなる雰囲気があれば、少しずつ戻って来てくれるさ。」
「俺が言えた義理じゃないけど、人間急に変わるなんて度台無理な話だ、強くなるのも手段に有っても良い、けど、他の可能性も見付けてくれ、君達は若い、大人ほど重い責任を負ってる訳では無いから何だって出来る。」
俺の言葉に続ける様に、上着を羽織った織斑先生が言葉を続ける。
彼の表情は、試合の時とは打って変わった穏やかな物で、何処か諭す様な色さえ見て取れる。
教師としてでは無く、ただ、人生の先輩として話しておきたい想いが有ったのだろう。
「だから、可能性を捨てないでくれ、答えは一つじゃない、最良じゃなくったって良い、最適じゃなくても良い、後で後悔したって良い、それはきっと、成長するための大きな糧だよ。」
彼は立ち上がりつつ肩を回し、遠くを見る様にを細めていた。
思う過去があるのか、彼の表情には一抹の寂しさが浮かんでいた。
これが演技なら、彼は大した役者だ。
けれど、俺はそれがどうしても偽りには思えなかった。
捻くれた思考が演技だと思わせようと働いても、何処かで彼が嘘を吐いていないと確信させる何かがあった。
「はい・・・!」
戸塚は彼の話に胸打たれたか、感激した様に瞳を輝かせていた。
さて、これで依頼も達成出来た事だ、俺達も戻るか・・・。
そう思った時だった、俺達の足元が大きく揺れ始めたのであった・・・。
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