ハーメルン
麻帆良に現れた聖杯の少女の物語
第13話―――その指針が示す先は……



 麻帆良学園都市の一角。武蔵麻帆良と呼ばれる区域に広大な敷地面積と全高70mにも達する尖塔を持つ、一際大きな教会が建っていた。
 一般的に無神論者が多い日本ではあるが、彼の一大宗教の信者はやはり居る者で。信仰に厚い者は足繁く通い、さほど厚くない者でもこの壮大な教会を見れば、まず間違いなく主の存在を身近に感じられずにはいられないだろう。

 だが、コンクリート造りながらも宮殿の如く外観を有し、信仰を誘い、深めさせるこの立派な教会もその実、飾りに近く……ある種の人間達のカモフラージュとして扱われている事を知る者は少ない。
 そう、真実この教会の実態を示している場は、信者たちが祈りを捧げる聖堂ではなくその地下に在った。
 歴史の裏に潜む魔法使い達が―――異質なる者、異端たる者であるが故に火星の地を寄り代にした世界へ多くの者が逃れるように移ったにも拘らず。それでも故郷たる地球の大地を忘れらない…或いは、意識せざるを得ない彼等はその大地を人間界と称し、その世界の裏で未だ多くの影響力を有し、行使していた。
 いや、現代でも多く残る魔法関連の遺跡に、魔獣や幻獣が住まう秘境。そして世界各地に封印された悪魔や鬼神といったものなど、そういった神秘と幻想の痕跡がある限り、彼ら―――魔法使いの組織は、この人間界にもやはり必要なのだ。
 その内の一つである関東魔法協会の本部にして、“本国”の下部組織である「魔法使い(メガロメセンブリア)・人間界日本支部」というのが、この教会の真の姿であった。


 イリヤがその地下施設を訪れるのは、今回で二回目である。
 一度目は、京都での一件でネギ達の救援に赴いた時だ。その一件で長距離転移を行う為に、此処の転移ポートを利用させて貰った。
 二度目である今日は……。

「やあ、イリヤ君」
「タカハタ先生…帰っていたの?」

 目的の部屋に向かう途中、背後から掛けられた声に振り向くと、タカミチ・T・高畑の姿がそこに在った。
 この前、顔を合わせたのはエヴァ邸で京都土産―――いや、詠春からとんでもない代物を送られた時だったから、凡そ9日ぶりになる。
 なお、彼が京都へ赴いていたのは、例の修学旅行の一件について関東を代表して事後処理に当たる為であった。その処理が一段落し、一度麻帆良に戻ってエヴァ邸を尋ねたのだが、直ぐにまた何処かへ出張に赴いていた。
 イリヤが聞いた話では、京都の事件に関わった黒幕…つまりはフェイトの足跡を追っていたらしい。

「余り元気が無さそうだね。やっぱり彼のことが心配かい?」
「……ええ、自分が見咎め。報告した事とはいえ…ね」

 彼は今日の此処へ召集が掛けられた事情を理解しており、イリヤの表情の険しさを見たタカミチは窺うように尋ね。イリヤも彼相手に隠す事に意味が無いと感じて正直に答えた。

「でも…暫定ではあるけど、今回の事でネギ君を重く処罰しようという動きは無いようだし、心配は要らないんじゃないかな」
「判っているわ。ネギには先日の京都の騒ぎでの功績もあるし、“英雄の息子”として期待している人も多いから……そうなるでしょうね」
「ふむ―――」

 タカミチは、答えるイリヤの様子を見て少し考え込む。

(ネギ君の事は心配していない。いや、今言ったように全くという訳じゃあないだろうけど、彼の身を案じる必要は無いと考えているか。そうなると―――)

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