ハーメルン
インフィニット・ストラトス Re:Dead《完結》
紅茶の味

シャルロットが学校へ行っている間、僕は畑を耕していた。
畑仕事と言う名のアルバイトだ。
セリーヌさんからは学校へ行くように勧められたが、正直知識的には必要を感じなかったし、何よりも経済的負担を掛けてしまう。
社長の愛人だが、この家にお金があるわけではない。
デュノア社長からの経済的な援助は雀の涙ほど。こっそりと口座に振り込まれるだけで直接来るわけではなかった。
それだけでデュノア社長とセリーヌさんの間柄は知れた。少なくとも、デュノア社長からすれば、遊びのそれに近かったに違いない。
セリーヌさんは働きに出ているが、僕という存在が増えた為にお金の支出が増加している。せめてもの蓄えにと、僕は畑仕事という名のバイトをしていた。
「兄ちゃん、体力ねぇな」
「す、すみま、せん……」
病院生活が長かったことに加え、元々運動体質でもなかったようで、僕は息絶え絶えだった。
別のバイトを探そうと、滝のような汗を掻きながら誓うのだった。


「んー……」
かと言って、こんな田舎町にバイトなんて簡単にある筈もなく、僕はリビングで雑誌やネットの前で唸っていた。
「ただいまー」
玄関の方からシャルロットの声が聞こえる。学校が終わったらしい。
「おかえりー」
本と睨めっこしたまま挨拶を返す。トコトコと足音が聞こえたと思ったら、トスンと背中に重しが乗った。
視界の横に金色の髪が顔を出す。
「何見てるの?」
「アルバイト雑誌」
「この辺りに仕事なんてある?」
「ないねぇ」
正確に言えばない事もないのだが、単純に数が少ないのに加え、僕のような未熟な若者がやる仕事がないのだ。
例えば、レジ打ちの仕事なんかも主婦の方々で既に埋まっている。
遠方へ行けば仕事はあるのだが、それだとシャルロットが帰ってきた時に誰もいなくなることになる。家族が増えたからには、彼女の寂しい時間を少しでも減らすべきだというのは、僕の中では変わらない考えだ。
「今日もお母さん遅いかな」
「かもね」
本当は僕が働いて、セリーヌさんが家に居てくれれば良いのだが、それをセリーヌさんは良しとしなかった。
僕が記憶喪失の為、突然どうなるか分からないことを考えれば、確かにその方が良いのだろう。
「シャルルも友達作りなよ」
「それはシャルロットにだけは言われたくないなぁ」
それもそうかもねと、シャルロットは笑った。くっついているので、笑いの振動がダイレクトに伝わってくる。
シャルロットは僕から身を離してテレビのスイッチを付けた。
テレビからはISのニュースが流れる。
「…………」
シャルロットは黙ってスイッチを消した。一連の行動に、僕は普段通りの口調で尋ねてみた。
「……ISは嫌い?」
「好きになれると思う?」
その返答に感情は込められていなかったが、その心の内を測ることは出来た。


インフィニット・ストラトス。
通称IS。
人間サイズの全身を覆う機械は、人に鉄の翼を与えた。
宇宙へも行けるパワードスーツ。世界に衝撃を与えた品物。
考案したのは篠ノ之束という日本人。当時、まだ小さかった篠ノ之束は開発したISをとんでもない形で世界に知らせる。
白騎士事件。
世界中のミサイルをハッキングし、日本へ向けて発射。それをISに落とさせるという、危険極まりないものだった。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析