ハーメルン
機動新世紀ガンダムX アムロの遺産
第19話

 アムロが操縦するバリエントは空へ飛び立つ。モビルスーツデッキを出てゾンダーエプタ―上空に来ると、目の前には進行を邪魔せんとシャギアのガンダムヴァサーゴが立ち塞がる。

「フフフッ、待っていたぞ。アムロ・レイ!」

「あの時の男か!?」

「ガンダムを使わぬ貴様に勝ち目など!」

「このくらいッ!」

両手のクロービーム砲を向けるヴァサーゴは容赦なく攻撃を仕掛ける。対するアムロは初めて乗る機体ではあるが、相手の殺気を感じ取り攻撃を先読みする事で被弾を避けた。
 操縦系統はドートレスと同じなお陰で動かす分には問題はない。けれども幾らアムロと言えども機体の限界性能を瞬時に引き出す事はできない。それにマニピュレーターにはガロードとカトックが居る。ガンダムタイプと正面から戦って勝てるだけの性能も持ってない。

「お前に構ってられる暇はない。振り落とされるなよ、ガロード」

「行かせてはやれないな。私との勝負を拒むか」

「この機体でも逃げるくらいならできる筈だ」

 回避行動を取りつつ腰部にマウントされたビームライフルを引き抜き相手に照準を定める。トリガーを引いて発射されるビームはヴァサーゴに迫るも、シャギアの技量と機体性能を前に簡単に避けられてしまう。
 互いに射撃戦を繰り広げながらも機体にダメージは通らず、アムロは時間が経過していく事に焦りを感じ始める。けれどもそれはシャギアも同じだった。
 新型とは言え量産機のバリエントにジワジワと押し返されて行く。

「機体性能も、状況的に見ても不利な相手にこうも苦戦させられるとは。アムロ・レイ、やはり貴様を生かして通す訳にはいかなくなった!」

 焦るシャギアは腹部のメガソニック砲を展開しバリエントを一気に攻め落とそうとするが、攻め方を変えたこの瞬間をアムロは見逃さない。

「落とさせて貰う!」

「ビーム砲を使うか。その変形が隙になる!」

 ペダルを踏み込むアムロはメインスラスターの出力を上げて正面からヴァサーゴに肉薄した。その予想外の行動にシャギアは思わず息を呑み、メガソニック砲の出力を下げてしまう。

「しまった!?」

 バリエントは握るビームライフルの銃口を展開するメガソニック砲に突き刺した。そのままトリガーを引くが、衝撃にビームライフルが耐えきれずコクピットからの反応を受け付けない。

「ライフルがイカれたか。サーベルで!」

「こんな所で……こんな所で負ける訳には!」

 幸いにもエネルギー放出による機体の誘爆は発生しなかった。それでもダメージは大きく、体勢を立て直すよりも早くにアムロの機体は背後へ回り込んでいる。
 ビームサーベルを引き抜き、背後の特徴的な黒い主翼を切断しメインスラスターを破壊した。空中機動が困難になるヴァサーゴは、そのまま重力に引かれて海へ落下する。

「ぐぉぉぉォォォッ!」

 その光景を確認するアムロは直ぐ様、ゾンダーエプタ―から逃げる船を目指して動く。

「これならすぐには追い付いて来れない。ガロード、無事だな」

「な、何とか。カトックも大丈夫だ」

「船までの距離は離れてない。このまま取り付くぞ」

 レーダーに反応する大型船の数は1隻だけ、見付けるのは容易くモニターにもその影が映る。一方で空中で戦闘を行っているエアマスターとアシュタロンの決着も付こうとしていた。

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