1.手紙を出す時は良く宛先を確認しよう
燃え尽き、半ば崩れ落ちた建物の陰から現れた人影、数にして二つ。
「ねえクロロ、あいつ等追わなくて良いの?」
「ん? ああ、今は追わない。……今は、な」
「? 何か良く分かんないけど、団長がそれで良いならまあ良いか(団長、何だか機嫌良さげ?)」
「ウボォーとフェイ、それにアルはどうした?」
「あの二人なら団長を待つついでの暇つぶしにあっちでテニスやってるよ? ほら、あそこ。アルはついさっきクルーザーに金目の物を持って行った」
視線の先にはは燃え残ったテニスコートで球技に戯れる二人の姿が有った。
「……すぐに呼んで来い、撤収だ」
「了解。ああ、クルーザーは直ぐにでも動かせる状態にしておいたから」
二人を呼びに行ったシャルナークを見送り、思考の海に沈む。
(星の使徒。団長クリードより、か)
宛先を間違えて届いた舞踏会の招待状を、そうとは知らずに懐に隠して、クロロ・ルシルフルはくつくつと笑った。
この時既に、招待状の本来の宛先:稀代の暗殺者――ゾルディックによって、十ニ本足の蜘蛛、その足が一本千切られている事に誰が気付けていただろうか。
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