ハーメルン
沈黙は金では無い。 
12.自己紹介は大切です。


「おや、どうかしたかな?」

「うーん…。 何か上手く言えないんだけどさ、クリードさんって不思議な人だなあって思って」

「…へえ、具体的には?」

「えっと、クリードさんって野生の動物みたいな凄く濃い血の匂いがするのにとっても優しい眼をしてるよね? だから不思議なんだ」

 ほんの一瞬だけクリードの顔が驚愕に染まり、すぐに元の冷酷な微笑を浮かべた表情に戻る。

「…君のお父さんはとても強かった。 恐らく彼に敵う相手は世界中を探しても両手の指に満たないだろうね」

 頑張ってお父さんに追い付くが良いさ。

 そう言ってクリードはわしゃわしゃとゴンの頭を撫でまわした。それは彼の素性を知る者からすれば、驚愕する事必至の光景だった。 

「あっ、俺と同じ位の子だ!」

 その直後、後ろからスケートボードに乗った銀髪の少年が二人を追い抜かして行く。
先頭へ躍り出た少年を見てゴンが明るい声を上げた。
 大半が筋骨隆々の参加者達の中に子供が一人という状況で、やはりどこかで疎外感や孤独感を感じていたのだろう。

「あれ? ここが先頭かよ。 とろとろ走ってるからって前に出過ぎたかな~。 …っと、そんな事よりさ、仲良いねお二人さん。 俺、キルアってーの。 一応、宜しくな」

「オレはゴン! 宜しくねキルア!」

 子供特有の無邪気さゆえか、二人は直ぐに打ち解けて好きな物談義に華を咲かせている。 その隣を並走しながら、クリードはサキの現在地点を携帯電話のGPSで確認していた。

(僕の後方、大体2キロ程か。 少し急ぐように忠告しておくかな)

「はー、まさか俺以外に子供の受験者が居るとは思わなかったなー。 …んで? そこの優男さんは何て名前?」

 メールを打ち終わった携帯を懐に仕舞い、クリードが答える。

「……クリード・ディスケンスだ」

 その名前を聞くや否やキルアから無邪気な子供の顔が消え、即座に警戒態勢に入る。そしてゴンを引きずる様にしてクリードから遠ざかって行った。

「えっ? いきなりどうしたのさキルア?」

 当然、訳が分からずに戸惑うゴン。 厳しい顔のまま、キルアは告げた。
 
「スタート地点からずっと引っかかってたんだ、アイツの顔が。 …思い出したぜ、ゴン。 クリードはな、二年前に俺の兄貴の腕を吹き飛ばした奴だよ」

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