15.5 貴方は神を信じますか?
吹き付けていた風は、いつの間にか止んでいた。
◆◆◆
「さて、行きますよクロロ! めくるめくスイーツ巡りの旅へ!!」
結局、20に迫る数のケーキをほぼ一人で完食し、更に御土産としてホールのショートケーキをぶら下げたセフィリアはすこぶる上機嫌だった。
「……は?」 「…ん?」
コイツは一体何を言っているんだ? というクロロの視線と、この人は何故に疑問符で返答したのでしょう? というセフィリアの視線が交錯する。
「貴方は何を勘違いしているのですか? 私の話はまだ終わってはいませんよ?」
「何…だと….!?」
「提示した条件は、『私の話を最後まで聞いてくれたら』です。 此処で別れるのならば、誠に残念な事ですが約定は無効となりますねえ」
してやったりな表情でにやにやと笑うセフィリアを力無く睨み返す事しか、クロロに出来る事は残っていなかった。
(コイツ、まだ食べる気なのか…!? 俺の金で!!)
「…太るぞ?」
失言だったと気付いたのは、直ぐ脇を通り抜けた一筋の風と、半ばから寸断されて轟音と共に倒れ込んだ電柱を視界に入れた後。
「う、運動するから平気です!!」
若干涙目になりながらそう叫ぶセフィリアを見て、こいつは間違いなくクリードの師匠なのだろうな、とクロロは疲労が溜まりきってぼんやりとした脳内で考えた。
半日後、スイーツ巡りの旅(強制)から漸く解放され、胸焼けの激しい腹を摩りつつクロロは帰路を辿る。
込み上げる吐き気と共に思い出すのは、帰り際のセフィリアの言葉。
この十年余り、私は手掛かりを求め、同じ記憶を持つ仲間を探しながら世界を回って来ました。
――そしてついに見つけたのです、全てを解き明かす『鍵』の存在を。
「神の御許へ踏み込む禁忌の技術、ナノマシン【G・B】―――か」
先に紹介された予知能力者の事と云い、今日は収穫の多い日だったと言えるだろう。 得た情報の代わり、対価はかなり高く付いてしまったが、それはこれから取り戻せば良いだけの話だ。
くつくつと笑いながら、盗賊は闇に紛れる様に姿を消した。
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