ハーメルン
魔法世界興国物語~白き髪のアリア~
第8話「前日」

Side アリア

「クルトおじ様、お休みが欲しいです」
「仕方ありませんねぇ、6時まででよろしいですか?」


何故かお小遣いをねだる孫と祖父のような調子で、私はお休みをゲットしました。
ここ2日程、政治や経済の勉強、クルトおじ様を経由して回って来る書類のサイン、旧ウェスペルタティアの政治家や貴族、官僚の有力者と会談、それに加えて王族としての立居振る舞いやしきたり、諸々についての勉強をしておりましたから。あと、演説の練習とか。


それに明日は、9月の29日。
私が、王様になる日です。


「それでは参りましょうアリア様。このクルトめが500人ばかり率いて街を案内・・・」
「じゃあ、行ってきますねー」
「・・・今のは、明らかに無視された気がしますねぇ」


ごめんなさい、クルトおじ様。
でも、ゾロゾロと兵士を連れて歩くのは恥ずかしいので。
と言うか、恥ずかしい以前の問題です。


私は新オスティア総督府の執務室から飛び出すと、トテトテと廊下を走りました。
途中、誰かとすれ違う時には、作法の先生に言われた通りにシズシズと歩きます。
軍人の方々には敬礼されるので、敬礼を返します。
この総督府にいる人の大半は、私のことを知っています。


正式発表はまだですが・・・公然の秘密、と言う奴ですね。
むしろ、クルトおじ様は大々的に私のことを世界に宣伝しているようですし。


「王女様扱いには、まだ慣れませんけど・・・」


オストラの時よりは加減されていますが、でも人にお世話されると言うのも。
・・・身だしなみくらいは、自分で整えたいです。


「エヴァさん、茶々丸さん! 田中さん、チャチャゼロさんにカムイさん!」
「我は無視か」
「ごめんなさい、起きているとは思わず・・・」


いざという時以外は起きてこないと思っていました、晴明さん。
私の部屋には、未だ行き場の無い(わけでも無いでしょうが)エヴァさん達がいました。
クルトおじ様も、私の私室の中までは口を出してこないので・・・。


「お帰りなさいませ、アリア先生」


お茶を淹れていたのか、ティーポット片手の茶々丸さんが私を出迎えてくれました。
実は茶々丸さん、この2日でしっかりと内定をゲットしています。
ここでは、私の専属侍女兼専属護衛(曹長待遇軍属)と言うことになっています。
チャチャゼロさんと晴明さんは職無しですが(クルトおじ様も、そこは何も言いませんでした)、何故か田中さんがちゃっかり近衛騎士団員になっています。


でも、エヴァさんだけは・・・。


「エヴァさん、エヴァさん!」
「・・・何だ、どうした」


カムイさんのモフモフの背中に頭を乗せて何かの本を読んでいたエヴァさんが、苦笑しながら私を見ました。
エヴァさんだけが、仕事をせずに好きなように過ごすと言う快挙を成し遂げています。
でも、何故か納得できるから不思議です。


私はそんな、いつもと変わらないエヴァさんに笑いかけると。


「お祭りに行きましょう!」





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