第10話「9月30日」
Side ロバート
「やはり、アレはミス・スプリングフィールドのようね」
「へぇー」
シオンの口から、体温計(旧世界仕様)を抜き取る。
何たってこんな古いタイプ使ってんだか・・・む、微熱だな。
シオンは額に冷却シートを張ったままの格好で、手元の端末をカタカタと叩いてる。
その画面には、連合の情報統制にかかってるはずの情報が記載されている。
まぁ、今さら驚きゃしねぇよ。こいつ優秀だし。
「6月に会ったっきりだけどよ、その時は先生だったな」
「たった3か月で・・・失われた王国の女王なんて」
「転職したんじゃね?」
シオンが、もの凄くバカを見る目で俺を見た。
・・・大丈夫、俺、頑張れる。
ヘレンに同じ目されたら、3秒で自殺するけど。
俺はシオンの手から端末を取り上げてサイドテーブルに置いて、シオンの両肩を押してベッドに寝かせた。
「・・・するの?」
「あと5年したらな」
「ヘレンだったら?」
「今すぐにでも」
「気が合うわね、私もよ」
バカな会話をしつつ、シオンの額の冷却シートを取り返る。
晩飯は、昔アリアが言ってた「卵うどん」でも作るかね・・・あ、うどんがねぇわ。
・・・小麦粉から、作るか?
『・・・電撃的な独立宣言から一夜明けた今日、新オスティアの地に降り立ったヘラス帝国第3皇女テオドラ殿下は、クルト・ゲーデル総督・・・失礼、宰相代理との会談の後、アリア新女王の戴冠式に同席。その後祝福を述べると共に、具体的な国交交渉に入ることになるだろうとの見解を記者団に・・・』
少し目を離した隙に、シオンはテレビをつけていた。
と言うか、ニュースを見ていた。
「ふーん、帝国はアリアの国を認めんのか?」
「あら、わからないわよ? 交渉に入るだけだもの」
「大人って汚ねぇ」
「ふふ・・・それにしても、地方自治と議会制民主主義を格としながら、女王と貴族は存在する。これはメルディアナ・・・イギリスを範とした国家体制を志向していると見て良いわね」
「はーん」
俺のいい加減な返答に、シオンは少しむっとした表情を浮かべた。
しかし俺はそれに欠片も怯むことはなかった。
土下座して許しを請うたりはしないのだ。
・・・本当だぜ?
『・・・アリアドネーのセラス総長は、記念祭開催期間中の新オスティアの治安については責任を持つとしながらも、新王国の独立問題に関してはコメントを避けており・・・』
プチン、とテレビの画面を消す。
まぁ、世の中大変みたいだが・・・。
「いいから寝ろよ、風邪っぴき」
「・・・寒いのだけど?」
俺にどうしろってんだよ、んなもん。
その時、ピピピッ・・・と、閉じた端末から音がした。
あん・・・?
「あら、メールが来たわ」
シオンが即座に起き上って、俺の果敢な妨害をウインク一発で回避し、端末を手に入れた。
開いて、軽く操作して・・・。
「・・・あら、ミスター・アルトゥーナからだわ」
「あん? ミッチェル?」
「この情報・・・」
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