第11話「踊らない会議」
Side リカード
旧ウェスペルタティアに王国が復活してから5日。
つまり俺ら元老院が大公国とか言うご大層な代物を作って、4日経った。
ウェスペルタティア駐留軍の大公国領内への撤退はほぼ終わった。
・・・ああ、「撤退」じゃなくて「転進」だったか?
くだらねぇ言い回しだぜ、と思いつつも、別にそれを口に出したりはしねぇ。
ナギやラカンだったら、言ってるだろうけどな。
「それで、どう責任を取るつもりなのだね、リカード君」
旧ウェスペルタティアの内戦をどう処理するか、そのために召集された元老院議会で、俺は責任を追及されていた。
俺は外交担当の執政官だから、今回の件に責任があるだろうと言うのが、他の爺ぃ共の言い分だ。
だが俺に言わせりゃあ、寝惚けた議論としか思えん。
「・・・元老院はいつからウェスペルタティアを対等な外国だと認めたんですかね?」
「何ぃ?」
「帝国やアリアドネーとの関係で問題があったならともかく、実効支配下にある地域が独立したからと言って、何で俺の責任なんです? あそこは属州総督クルト・ゲーデルの管轄下にあったわけだし」
「ぬ・・・」
「しかしそのクルトめは我らを裏切った。誰かが責任を取らねばならんだろう」
だから、何でその誰かが俺なんだよ。
・・・ったく、言いたいことも言えねぇんだから、向いてねぇよマジで。
「・・・まぁまぁ、そうリカード殿ばかりを責めても仕方あるまい。たかが地方反乱ではないか」
そう言って場を宥めたのは、むしろ禿げきった方が潔いんじゃねぇのって感じの、金髪が少し残った爺ぃだった。
ロドニー元老院議員、年は確か75歳。艦隊の提督だった奴で、今じゃ軍事担当の執政官様だ。
・・・アリエフの爺ぃと同じ人種だ、精神的な意味でな。
「し、しかしロドニー殿、実際に我々は旧ウェスペルタティアの大半から追い出されたではないか」
「それは野蛮な奇襲に驚き、戦術的に撤退を選択しただけのこと。銀髪の小娘ごとき、一撃を与えれば泣いて許しを請うてくるわ」
「・・・つまり、何か対応策があると?」
俺も軍人だったから、なんとなくわかる気がするがね。
たぶん、この爺さんは・・・。
「無論、軍部はすでに策を講じておる・・・見るが良い」
議場の中心に、巨大な地図が映し出される。
そこには、現在のウェスペルタティア駐留軍の配置だけでなく、周辺の連合領の軍配置まで描きこまれた精巧な物だった。
こうして見ると、ウェスペルタティアは北を除いて、周辺を連合に囲まれている。
「まずシルチス亜大陸のパルティア総督トレボニアヌスに2個軍団一万の兵団を与え、王国東端イギリカ侯爵領に侵攻する」
ピピ・・・と、地図上で赤い矢印がシルチスからウェスペルタティア東部に向けて進んだ。
「さらにウェスペルタティア駐留軍と本国からの援軍を合わせた4個軍団二万をムミウス司令官に与え、大公国軍一万と共にウェスペルタティアの中枢を扼する。コレには第12、第13の艦隊任務部隊を付ける。空母2隻と戦艦8隻を中心とする146隻の大艦隊が艦列を連ね進撃するのだ、我らの勝利は疑いない」
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